刃を交えて。#8 Side Red
文字数 1,045文字
声の主は、ステージ片づけのために戻ってきたナンシー先輩だった。表の投票結果を見てきたのか、全然面白くなさそうな顔をしてる。
「入れ替え時間をフル活用したの間違いじゃなくて?」
ここぞとばかりにてんちゃんが先輩に切り返す。詰め寄ることはしないのはえらい……と思ったけど、若干ちーちゃんに動きを制されるみたいだった。
「ていうか、それだったらメンバーの片づけが終わるまで居座って喋ってんのもナシじゃない?」
「あれはお客さんにギリギリまで楽しませるれっきとしたパフォーマンスだ。そんなこともわからないのかい?」
「それがアリなら準備時間を楽しみながら待ってもらうこっちのパフォーマンスだってアリだろ。そっちがアリでこっちがナシなのはおかしくない?」
初対面とは思えないほどのバチバチ具合。初めて会ったときのてんちゃんを見てるみたいだ。
「それにそこでお客を引き止めたからって最後まで聴いてもらえるかどうかは別だ。ボクたちの演奏にそれだけの実力があるってことはわかってもらえたんじゃないの?」
まくしたてるてんちゃんに、気圧され気味だったナンシー先輩はふん、と鼻を鳴らして言った。
「……キミ、その手柄に自分も含めてるのかい? さっき自分で『メンバーじゃない』って言っておいて」
あたしたち……てんちゃん以外のあたしたちの表情がぴっと硬くなる。その話、いつの間に聞いてたんだろう。
当のてんちゃんは、何も気にしてないふうにけろっと答えた。
「そうだよ。メインはこの三人、ボクはあくまでサポートで、正式メンバーじゃない」
でもさ、と首を傾げて、どこか挑発的に付け加える。
「聴いてる人にそんなの関係なくない? ボクがサポートだって知ったからって、票数が変わるとでも思ってんの?」
票の話をされてぐっ、と言葉に詰まる先輩を突き放すように、てんちゃんが言った。
「そんなこと気にするのは、揚げ足取りたがるあんたぐらいだよ。気に食わないなら、明日ボクたちよりも面白いパフォーマンスしてみせたら?」
先輩はしばらくてんちゃんを睨みつけていたが、くるりと踵を返した。
「そうだな、これから明日の作戦を練るとするよ、今日よりも素晴らしい演奏を見せるためにね。だから片づけは任せたよ、サポートさん」
「はい? あの、ちょっと先輩……!」
面食らって慌てて声をかけたが、先輩はそのままテントから出ていってしまった。てんちゃんは「あーあ」と肩をすくめて、あたしたちのほうをちらっと見た。
「あのナルシストのぶん、ボクが入れば手は足りる?」
「入れ替え時間をフル活用したの間違いじゃなくて?」
ここぞとばかりにてんちゃんが先輩に切り返す。詰め寄ることはしないのはえらい……と思ったけど、若干ちーちゃんに動きを制されるみたいだった。
「ていうか、それだったらメンバーの片づけが終わるまで居座って喋ってんのもナシじゃない?」
「あれはお客さんにギリギリまで楽しませるれっきとしたパフォーマンスだ。そんなこともわからないのかい?」
「それがアリなら準備時間を楽しみながら待ってもらうこっちのパフォーマンスだってアリだろ。そっちがアリでこっちがナシなのはおかしくない?」
初対面とは思えないほどのバチバチ具合。初めて会ったときのてんちゃんを見てるみたいだ。
「それにそこでお客を引き止めたからって最後まで聴いてもらえるかどうかは別だ。ボクたちの演奏にそれだけの実力があるってことはわかってもらえたんじゃないの?」
まくしたてるてんちゃんに、気圧され気味だったナンシー先輩はふん、と鼻を鳴らして言った。
「……キミ、その手柄に自分も含めてるのかい? さっき自分で『メンバーじゃない』って言っておいて」
あたしたち……てんちゃん以外のあたしたちの表情がぴっと硬くなる。その話、いつの間に聞いてたんだろう。
当のてんちゃんは、何も気にしてないふうにけろっと答えた。
「そうだよ。メインはこの三人、ボクはあくまでサポートで、正式メンバーじゃない」
でもさ、と首を傾げて、どこか挑発的に付け加える。
「聴いてる人にそんなの関係なくない? ボクがサポートだって知ったからって、票数が変わるとでも思ってんの?」
票の話をされてぐっ、と言葉に詰まる先輩を突き放すように、てんちゃんが言った。
「そんなこと気にするのは、揚げ足取りたがるあんたぐらいだよ。気に食わないなら、明日ボクたちよりも面白いパフォーマンスしてみせたら?」
先輩はしばらくてんちゃんを睨みつけていたが、くるりと踵を返した。
「そうだな、これから明日の作戦を練るとするよ、今日よりも素晴らしい演奏を見せるためにね。だから片づけは任せたよ、サポートさん」
「はい? あの、ちょっと先輩……!」
面食らって慌てて声をかけたが、先輩はそのままテントから出ていってしまった。てんちゃんは「あーあ」と肩をすくめて、あたしたちのほうをちらっと見た。
「あのナルシストのぶん、ボクが入れば手は足りる?」