音を重ねて。#5 Side Yellow
文字数 1,067文字
「さて……忘れないうちに振り返りしましょうか」
興奮冷めやらぬなか、ちなっちゃんがギターの代わりにペンを持った。この音がこうで……とか、この部分はこのほうがよくて……とか、自分だけじゃなくあたしたちの分までスコアにいろいろ書き加えていく。
あたしなんて、まだ自分が弾くことだけで精一杯なのに、あの最初の一回の演奏で、弾きながら他の音も聴いて、直したほうがいいところまで挙げられるなんて。今のところ音楽の聴き方は圧倒的にちなっちゃんが上手だな、と悔しい思いもありつつ、素直に感心もしてしまう。
「さすが、軽音にへたくそって言っただけあるね」
「別に直接は言ってないけど……って、なんでマキがその話知ってるの」
「なおっちゃんからバンドを始める経緯を散々聞かされたから」
ちなっちゃんがじろりとなおっちゃんを睨む。いや、あたしがなおっちゃんでも話して回りたくなるよ、伝説的発言だもん。これはいつまでも語り継がなきゃ。
「まあいいけど……あいつらよりすごくなりたいんだったら、詰められるところはどんどん詰めていかないと」
そう言ってまたスコアに目を落とすちなっちゃんの横顔、なんか……
「かっこいい……!」
隣のなおっちゃんが、目をキラキラさせながらあたしのせりふを奪った。まあ誰が見てもかっこいいから仕方がない。
「でもちーちゃん、ほんと耳がいいよね。いろんな音楽めっちゃ聴きこんでるんでしょ」
「そうね……たくさん聴くし、スコア持ってたら見ながら聴いたり、弾いたりするかな。あとは、店長の娘さんのギターの練習見たり……」
その言葉に、あたしもなおっちゃんも、え、と固まった。
「ちーちゃん、ギターの先生もできるの……?」
なおっちゃんに言われて、そんな、とちなっちゃんがブンブン手を振った。
「先生ってほどのものじゃなくて……ただ練習に付き合ってるだけ。その子も音楽のカンというか、センスがいいから、ほかにもベースとかドラムとかキーボードも……」
そこまで話してから、ちなっちゃんがふと口をつぐんだ。自分の発言に、何か引っかかってるみたいだ。あたしも気になって尋ねる。
「ちなっちゃん……その子、ドラムできるの?」
「……できる」
「歳は? いくつ?」
「わたしの、ひとつ下。違う高校だけど……」
お互いに顔を見合わせた。なおっちゃんが、確かめるようにつぶやく。
「……部活じゃないから、同じ学校じゃなくても、いいよね」
あたしもちなっちゃんも頷く。考えてることは、おそらく皆同じ。
興奮冷めやらぬなか、ちなっちゃんがギターの代わりにペンを持った。この音がこうで……とか、この部分はこのほうがよくて……とか、自分だけじゃなくあたしたちの分までスコアにいろいろ書き加えていく。
あたしなんて、まだ自分が弾くことだけで精一杯なのに、あの最初の一回の演奏で、弾きながら他の音も聴いて、直したほうがいいところまで挙げられるなんて。今のところ音楽の聴き方は圧倒的にちなっちゃんが上手だな、と悔しい思いもありつつ、素直に感心もしてしまう。
「さすが、軽音にへたくそって言っただけあるね」
「別に直接は言ってないけど……って、なんでマキがその話知ってるの」
「なおっちゃんからバンドを始める経緯を散々聞かされたから」
ちなっちゃんがじろりとなおっちゃんを睨む。いや、あたしがなおっちゃんでも話して回りたくなるよ、伝説的発言だもん。これはいつまでも語り継がなきゃ。
「まあいいけど……あいつらよりすごくなりたいんだったら、詰められるところはどんどん詰めていかないと」
そう言ってまたスコアに目を落とすちなっちゃんの横顔、なんか……
「かっこいい……!」
隣のなおっちゃんが、目をキラキラさせながらあたしのせりふを奪った。まあ誰が見てもかっこいいから仕方がない。
「でもちーちゃん、ほんと耳がいいよね。いろんな音楽めっちゃ聴きこんでるんでしょ」
「そうね……たくさん聴くし、スコア持ってたら見ながら聴いたり、弾いたりするかな。あとは、店長の娘さんのギターの練習見たり……」
その言葉に、あたしもなおっちゃんも、え、と固まった。
「ちーちゃん、ギターの先生もできるの……?」
なおっちゃんに言われて、そんな、とちなっちゃんがブンブン手を振った。
「先生ってほどのものじゃなくて……ただ練習に付き合ってるだけ。その子も音楽のカンというか、センスがいいから、ほかにもベースとかドラムとかキーボードも……」
そこまで話してから、ちなっちゃんがふと口をつぐんだ。自分の発言に、何か引っかかってるみたいだ。あたしも気になって尋ねる。
「ちなっちゃん……その子、ドラムできるの?」
「……できる」
「歳は? いくつ?」
「わたしの、ひとつ下。違う高校だけど……」
お互いに顔を見合わせた。なおっちゃんが、確かめるようにつぶやく。
「……部活じゃないから、同じ学校じゃなくても、いいよね」
あたしもちなっちゃんも頷く。考えてることは、おそらく皆同じ。