トレジャーハント。 #3 Side Yellow
文字数 1,193文字
『あ、やっぱり表情気づいた? 自分でもびっくりしちゃった、あんなガチガチになってたなんてさあ』
てへへ、とスマホの画面越しに笑うなおっちゃんを見て、
「それ、その顔! その顔をステージで見せなきゃ」
と思わず言葉に力がこもる。いまのがあまりにもいい笑顔だったのと、なおっちゃんと話すのが久しぶりでテンションが上がってるせいだ。
あのあと、いてもたってもいられなくなって、なおっちゃんにビデオ通話しない? って連絡したのがついさっき。遅い時間に付き合わせてごめん、とは思ったけど、
『全然いいよー、あたしもまきちゃんと久々に話せてめっちゃ嬉しい』
と言ってくれたので、素直にご厚意に甘えることにした。
『で、他にも何か見つかった? あたしたちに足りないもの』
「そうそう、それなんだけど……なおっちゃん、演奏してるとき、どこ見てたか憶えてる?」
『え?』
えーっと、となおっちゃんが記憶を辿るように視線を宙に泳がせる。
『正直、あんまり憶えてないんだけど……お客さんたくさんだなあって、人の頭がたくさんあったことくらいしか……』
「頭? 顔じゃなくて?」
『うん、そう頭。顔までは見る余裕なくて……』
「それ。それなのよなおっちゃん」
『え、それ? どれ?』
目をぱちくりさせてるなおっちゃんに、
「他のバンドの演奏見てたんだけどね、ぜんっぜんカメラのほう向かないの。みんなお客さんのほう向いててさ」
視線を向ければ、その方向から歓声があがる。そしてその声に手を振ったり、頷いたりして応える。そんなコミュニケーションが、ステージとフロアの間で交わされていたのだ。
その様子を思い出しながら、あたしは呟いた。
「もったいないなって思ってさ」
『もったいない?』
「絶対なおっちゃんの得意分野だと思うんだよね、そうやってお客さんと仲良くなるの」
いろんな人と仲良くなって、楽しいことに巻き込んでいく。そういう力をなおっちゃんが持ってることは、巻き込まれたあたしがいちばんよく知っていた。
『お客さんと仲良く、かあ……』
なおっちゃんは『どうやったらできるかなあ……』としかめっ面。あたしもつられてうーむってなってから、ぽつっと言った。
「それで言うと、Phantom ってバンドがいちばんすごかったんだよね……」
『Phantom? あの男の子がいたバンド?』
「そう、なんというか、巻き込み方が上手というかさ。あれはもう一回ちゃんと観たほうがいい気がするんだよね……」
そこまで話してから、はっとなおっちゃんの顔色を伺う。この前のライブの直後、あの男子の話をしただけでどんよりしてたのを思い出したからだ。
でもあたしの心配をよそに、なおっちゃんは目を輝かせて言った。
『そうそう、それなんだけどね』
「え、どれ?」
てへへ、とスマホの画面越しに笑うなおっちゃんを見て、
「それ、その顔! その顔をステージで見せなきゃ」
と思わず言葉に力がこもる。いまのがあまりにもいい笑顔だったのと、なおっちゃんと話すのが久しぶりでテンションが上がってるせいだ。
あのあと、いてもたってもいられなくなって、なおっちゃんにビデオ通話しない? って連絡したのがついさっき。遅い時間に付き合わせてごめん、とは思ったけど、
『全然いいよー、あたしもまきちゃんと久々に話せてめっちゃ嬉しい』
と言ってくれたので、素直にご厚意に甘えることにした。
『で、他にも何か見つかった? あたしたちに足りないもの』
「そうそう、それなんだけど……なおっちゃん、演奏してるとき、どこ見てたか憶えてる?」
『え?』
えーっと、となおっちゃんが記憶を辿るように視線を宙に泳がせる。
『正直、あんまり憶えてないんだけど……お客さんたくさんだなあって、人の頭がたくさんあったことくらいしか……』
「頭? 顔じゃなくて?」
『うん、そう頭。顔までは見る余裕なくて……』
「それ。それなのよなおっちゃん」
『え、それ? どれ?』
目をぱちくりさせてるなおっちゃんに、
「他のバンドの演奏見てたんだけどね、ぜんっぜんカメラのほう向かないの。みんなお客さんのほう向いててさ」
視線を向ければ、その方向から歓声があがる。そしてその声に手を振ったり、頷いたりして応える。そんなコミュニケーションが、ステージとフロアの間で交わされていたのだ。
その様子を思い出しながら、あたしは呟いた。
「もったいないなって思ってさ」
『もったいない?』
「絶対なおっちゃんの得意分野だと思うんだよね、そうやってお客さんと仲良くなるの」
いろんな人と仲良くなって、楽しいことに巻き込んでいく。そういう力をなおっちゃんが持ってることは、巻き込まれたあたしがいちばんよく知っていた。
『お客さんと仲良く、かあ……』
なおっちゃんは『どうやったらできるかなあ……』としかめっ面。あたしもつられてうーむってなってから、ぽつっと言った。
「それで言うと、
『Phantom? あの男の子がいたバンド?』
「そう、なんというか、巻き込み方が上手というかさ。あれはもう一回ちゃんと観たほうがいい気がするんだよね……」
そこまで話してから、はっとなおっちゃんの顔色を伺う。この前のライブの直後、あの男子の話をしただけでどんよりしてたのを思い出したからだ。
でもあたしの心配をよそに、なおっちゃんは目を輝かせて言った。
『そうそう、それなんだけどね』
「え、どれ?」