夏が、はじまる。#3 Side Red
文字数 652文字
「ちーちゃん?」
ぼーっとしてたちーちゃんに声をかけると、彼女はハッとして、「ごめん、なに?」という顔をしてきた。これは連れてきたのは間違いだったかも、とちょっと後悔。なんか、リハの時点で音に気圧されてるみたいで。
あたしが彼女――佐倉 千夏 をライブに呼んだのは、まあ他に人が捕まらなかったってのもあるんだけど、これを機にちーちゃんともっと仲良くなれないかなー、なんて気持ちがあったから。まあつまりシタゴコロ、ってやつ?
あたしは気安く「ちーちゃん」なんて呼んでるけど、彼女とは音楽の授業でちょっとしゃべったくらいの仲。ときどきお手伝いを頼んだりはしてるけど、正直知らないことばかりだ。
人と話すより本が好きそうで、髪が長くて、目元がちょっと気の強そうなクールビューティ。そう美人なの、カワイイっていうよりキレイ系のお姉さんっていうか……って、あたしの好み目線の話をしてもしょーがないか。
とにかく、今日はライブを観て、帰りにちょっとお茶でもして、ちーちゃんが読んでる本のこととか、趣味の話とかできたら……なんてことを企んで、いやいや、計画してた。
……そのはずだったんだけど、なんか最初から誤算だったっぽい。ライブの一曲目が終わって振り返ると、後ろの壁際に立ってたはずのちーちゃんがいなくなっていたのだ。
「一緒に来てた子、始まってすぐに出てっちゃったけど」
近くにいた友達に教えてもらって、あたしも慌てて音楽室を出た。あーあ、今日のデート作戦は大失敗だわ。
ぼーっとしてたちーちゃんに声をかけると、彼女はハッとして、「ごめん、なに?」という顔をしてきた。これは連れてきたのは間違いだったかも、とちょっと後悔。なんか、リハの時点で音に気圧されてるみたいで。
あたしが彼女――
あたしは気安く「ちーちゃん」なんて呼んでるけど、彼女とは音楽の授業でちょっとしゃべったくらいの仲。ときどきお手伝いを頼んだりはしてるけど、正直知らないことばかりだ。
人と話すより本が好きそうで、髪が長くて、目元がちょっと気の強そうなクールビューティ。そう美人なの、カワイイっていうよりキレイ系のお姉さんっていうか……って、あたしの好み目線の話をしてもしょーがないか。
とにかく、今日はライブを観て、帰りにちょっとお茶でもして、ちーちゃんが読んでる本のこととか、趣味の話とかできたら……なんてことを企んで、いやいや、計画してた。
……そのはずだったんだけど、なんか最初から誤算だったっぽい。ライブの一曲目が終わって振り返ると、後ろの壁際に立ってたはずのちーちゃんがいなくなっていたのだ。
「一緒に来てた子、始まってすぐに出てっちゃったけど」
近くにいた友達に教えてもらって、あたしも慌てて音楽室を出た。あーあ、今日のデート作戦は大失敗だわ。