トレジャーハント。 #5 Side Red
文字数 921文字
「こうやって見てみると、結構近いんだね」
目の前のステージを見上げながら、まきちゃんが呟いた。
この前は後ろのほうから眺めるだけだったけど、今日はフロアの真ん中くらいまでステージに近づいてみた。後ろから見るとだいぶ遠くに感じたステージが、少し進んだだけでぐっと距離が縮まった気がする。
「これなら音だけじゃなくて、動きもよく見えそうね」
前の人が邪魔じゃなければ、と、ちーちゃんが背伸びをして前を見る。少し背の低いちーちゃんは、さっそく人の波に埋もれそうだった。
「ていうか、対バンのときより人多くない? この前もっと余裕あった気がするんだけど」
同じく背伸びで周りを見渡しながら、てんちゃんがちょっと感心したように言った。つられて見回すと、たしかにこの前よりも、人口密度が上回ってるかも。これだけの人が、Phantom だけを観に来てるってことだ。
「すごいんだね、Phantom ……」
そう呟いたとき、薄明るかったフロアが一気に暗くなった。慌てて正面に向き直ると、ステージの照明が徐々に明るくなって、ひとり、またひとりとメンバーが出てくる。そのたびにあちこちから歓声が上がって、正直ちょっと気圧されていた。
と、受付にいたあの男の子も現れた。歓声に混じって、「シュウ!」と名前を呼び、手を振る姿がちらほら見える。その声援に片手を上げて応えたシュウさんは、上手に置いてあるギターを肩に引っ掛けて、フロアを見回した。
そしてこちらを向いた彼と、ぱちりと目が合った、気がした。
(あ……)
なんでだろう、目が合った瞬間、さっきまでの気圧されてた気持ちがふわっと消えていくのを感じた。受付で話したときと同じ優しい目が、大丈夫と言ってくれてる気がして。
(これが、ステージとフロアで仲良くなるってこと……?)
不思議な感覚に包まれていたところを、今日いちばんの歓声で現実に引き戻される。ちょうど、ステージにコウさんが現れたところだった。
対バンイベントのときと同じように、突如として軽快なイントロが流れ始める。開始の挨拶も挟まずに、コウさんがマイクを構え、最初の歌声を発した。
目の前のステージを見上げながら、まきちゃんが呟いた。
この前は後ろのほうから眺めるだけだったけど、今日はフロアの真ん中くらいまでステージに近づいてみた。後ろから見るとだいぶ遠くに感じたステージが、少し進んだだけでぐっと距離が縮まった気がする。
「これなら音だけじゃなくて、動きもよく見えそうね」
前の人が邪魔じゃなければ、と、ちーちゃんが背伸びをして前を見る。少し背の低いちーちゃんは、さっそく人の波に埋もれそうだった。
「ていうか、対バンのときより人多くない? この前もっと余裕あった気がするんだけど」
同じく背伸びで周りを見渡しながら、てんちゃんがちょっと感心したように言った。つられて見回すと、たしかにこの前よりも、人口密度が上回ってるかも。これだけの人が、
「すごいんだね、
そう呟いたとき、薄明るかったフロアが一気に暗くなった。慌てて正面に向き直ると、ステージの照明が徐々に明るくなって、ひとり、またひとりとメンバーが出てくる。そのたびにあちこちから歓声が上がって、正直ちょっと気圧されていた。
と、受付にいたあの男の子も現れた。歓声に混じって、「シュウ!」と名前を呼び、手を振る姿がちらほら見える。その声援に片手を上げて応えたシュウさんは、上手に置いてあるギターを肩に引っ掛けて、フロアを見回した。
そしてこちらを向いた彼と、ぱちりと目が合った、気がした。
(あ……)
なんでだろう、目が合った瞬間、さっきまでの気圧されてた気持ちがふわっと消えていくのを感じた。受付で話したときと同じ優しい目が、大丈夫と言ってくれてる気がして。
(これが、ステージとフロアで仲良くなるってこと……?)
不思議な感覚に包まれていたところを、今日いちばんの歓声で現実に引き戻される。ちょうど、ステージにコウさんが現れたところだった。
対バンイベントのときと同じように、突如として軽快なイントロが流れ始める。開始の挨拶も挟まずに、コウさんがマイクを構え、最初の歌声を発した。