Interlude-2 Side Phantom
文字数 1,079文字
「あーあ、ほんまおもろい子らやったなあ」
「コウ、ほんとに楽しそうだったね、あの子たちと話してるとき」
ワンマンライブの帰り道、コウとシュウはふと同じ少女たちのことを思い出していた。ライブ後に楽屋に呼んだ、あの少女たちを。
「なんやシュウ、自分もずーっとにやにやしとったくせに」
「せめてにこにこって言ってよ人聞きの悪い……」
シュウが呆れたようにぼやいてから、ふと笑みを漏らす。
「でも、楽しみだなあ。あの子たちがどんなふうに成長していくのか」
「おっ、シュウもそう思うか」
「コウだってそう思ったから、対バンの日に声かけたんでしょ?」
「そりゃそうや。オレの音楽センサーに引っかかったバンドやからな、将来『オレの目に狂いはなかった!』って言わせてほしいわ」
「なにその変なプレッシャー」
シュウのつぶやきを無視して、「それに」とコウは続けた。
「あの子らは(NULL )二世やからな、正真正銘、オレらの後輩や」
「それで後輩と言えるかはわからないけど……でも、あの子たちのバンド名の話聞いて、親近感は湧いたよ」
「せやろ?」
コウがにっと笑って、鞄から二枚のフライヤーを取り出す。どちらも対バンライブのフライヤーのようだったが、片方の日付は二年前のものだった。出演バンドの一覧には、『(NULL)』の文字。
それを見て、シュウが「なつかしー」と目を細めながら言った。
「まさか、初めてあの対バン出たときのおれたちとおんなじ境遇だったなんてね」
「いやー、あんときは焦ったな。『バンド名入れてへんのに勝手に名前ついた!』って、大騒ぎやったもんな」
「あのときスタッフさんに言ったはずなんだけどなあ、申し込みフォームのこの仕様どうにかなりませんかって。今度山口さんあたりに修正頼んでみるか……」
シュウが眉根を寄せる。どうやら彼らはイベント申し込み画面の、バンド名が(NULL)になるエラーを知っていたようだった。二年前、その身をもって。
「せや、さっきのシュウの話聞いて思い出したわ。初めてPhantomの名前でステージに立ったとき、対バンした先輩に言われたこと」
「おれも、それ思い出してた。『きみたちが化けてく過程を見られて楽しい』……だったっけ」
「それそれ。オレも、今は荒削りのあの子らが、これからどう変わってくか、過程も含めて見てみたいんやと思う」
コウはそう言って、二枚目のフライヤーを眺める。こちらはつい先日の対バンライブの日付。出演者の三番目にある『(NULL)』は、彼らが話題にしている少女たちを示す文字だった。
「文字通り『名もない』ところから始まったバンド仲間として、な」
「コウ、ほんとに楽しそうだったね、あの子たちと話してるとき」
ワンマンライブの帰り道、コウとシュウはふと同じ少女たちのことを思い出していた。ライブ後に楽屋に呼んだ、あの少女たちを。
「なんやシュウ、自分もずーっとにやにやしとったくせに」
「せめてにこにこって言ってよ人聞きの悪い……」
シュウが呆れたようにぼやいてから、ふと笑みを漏らす。
「でも、楽しみだなあ。あの子たちがどんなふうに成長していくのか」
「おっ、シュウもそう思うか」
「コウだってそう思ったから、対バンの日に声かけたんでしょ?」
「そりゃそうや。オレの音楽センサーに引っかかったバンドやからな、将来『オレの目に狂いはなかった!』って言わせてほしいわ」
「なにその変なプレッシャー」
シュウのつぶやきを無視して、「それに」とコウは続けた。
「あの子らは(
「それで後輩と言えるかはわからないけど……でも、あの子たちのバンド名の話聞いて、親近感は湧いたよ」
「せやろ?」
コウがにっと笑って、鞄から二枚のフライヤーを取り出す。どちらも対バンライブのフライヤーのようだったが、片方の日付は二年前のものだった。出演バンドの一覧には、『(NULL)』の文字。
それを見て、シュウが「なつかしー」と目を細めながら言った。
「まさか、初めてあの対バン出たときのおれたちとおんなじ境遇だったなんてね」
「いやー、あんときは焦ったな。『バンド名入れてへんのに勝手に名前ついた!』って、大騒ぎやったもんな」
「あのときスタッフさんに言ったはずなんだけどなあ、申し込みフォームのこの仕様どうにかなりませんかって。今度山口さんあたりに修正頼んでみるか……」
シュウが眉根を寄せる。どうやら彼らはイベント申し込み画面の、バンド名が(NULL)になるエラーを知っていたようだった。二年前、その身をもって。
「せや、さっきのシュウの話聞いて思い出したわ。初めてPhantomの名前でステージに立ったとき、対バンした先輩に言われたこと」
「おれも、それ思い出してた。『きみたちが化けてく過程を見られて楽しい』……だったっけ」
「それそれ。オレも、今は荒削りのあの子らが、これからどう変わってくか、過程も含めて見てみたいんやと思う」
コウはそう言って、二枚目のフライヤーを眺める。こちらはつい先日の対バンライブの日付。出演者の三番目にある『(NULL)』は、彼らが話題にしている少女たちを示す文字だった。
「文字通り『名もない』ところから始まったバンド仲間として、な」