刃を交えて。#3 Side Blue
文字数 1,267文字
「あのさあ……なんでそういう大事な話をギリギリまで言わないわけ……?」
放課後、スタジオの受付で人気投票の件を話すと、案の定てんちゃんはじろりとナオを睨み付けた。わたしとマキはその横であいまいに笑う。
人気投票は、ステージ発表団体の中でもバンド部門、ダンス部門などの部門ごとに行われる。来場者には部門ごとに一票ずつ投票権があり、各部門でいちばん票を集めた団体が、後夜祭で発表ができる……らしい。わたしもさっき知ったばかりなので理解は追いついていない。
「つまり……なおっちゃんはもともと、この人気投票で軽音との差を見せつけようとしてたってわけ……?」
「そのとーり!」
えへん、と胸を張るナオだが、それならそうとわたしたちにはちゃんと言っておいてほしかった。危うくあの説明会の場所で、ほかの参加者の前で知った知らないとひと悶着起こすところだった。
「で? そのナルシー先輩のバンドと得票勝負することになったのかい?」
横で話を聞いてる店長は、なぜか楽しげだ。他人事だと思って。
「ナルシーじゃなくてナンシー先輩……もともとドラムのメンバー探してたときに先輩にも声かけてたんだけど、そのときにちーちゃんがライブ途中抜けしたことでねちねち言われちゃって……」
ナオが申し訳なさそうに語尾をしぼませる。ああ、だからわたしをドラムパートに行かせたくなかったのか。ようやく話が見えてきた。
「ごめんなさい、わたしのせいで苦労かけちゃって」
「ちーちゃんは悪くないよ。結局あの流れだったら、あたしたちの誰が行っても険悪なのには変わりなかったし」
結局、ドラムパートの打ち合わせにはナオが参加した。ナンシー先輩に宣戦布告した直後ということもあり、先輩に邪険にされるわ他の部員に心配されるわ、だいぶカオスだったそうだ。
「ライバルはほかのバンドみんなだけど……でもナンシー先輩のバンドは、軽音のなかでも結構人気だから、投票はそこに勝てれば! って感じかな」
「そういうのって、結局身内で票が回されるだけだろ。ほんとに勝てんの?」
てんちゃんの指摘にも、ナオは動じない。
「部内の票は来ないだろうねえ。でも、そこはあんまり期待してないよ」
「じゃあどこから……」
「知り合いが出てるからちょっと観に来た人とか、あともともとライブを観にくるつもりじゃなかった人とか。入口の近くだから、きっとそういう人もたくさん通ると思うんだ。あたしはそういう人たちに、少しでもあたしたちの音楽を届けたい。そういうパフォーマンスをしたい」
そう話すナオの表情は、Phantomのワンマンの楽屋で見たときと同じかそれ以上の決意と、自信に溢れていた。
「そうね、もう何もないわたしたちじゃないものね」
そう言うと、ナオはにこりと笑って、
「ちーちゃんも言ってたもんね、初心者の本気を聴かせてやるんだって」
あのときの台詞を繰り返されて、少し頬が熱くなる。勢いで言ってしまったけど、あれがわたしの、わたしたちの本心。先輩や、軽音への挑戦状だ。
「……初心者と舐めてかかってきたこと、後悔させてやりましょう」
放課後、スタジオの受付で人気投票の件を話すと、案の定てんちゃんはじろりとナオを睨み付けた。わたしとマキはその横であいまいに笑う。
人気投票は、ステージ発表団体の中でもバンド部門、ダンス部門などの部門ごとに行われる。来場者には部門ごとに一票ずつ投票権があり、各部門でいちばん票を集めた団体が、後夜祭で発表ができる……らしい。わたしもさっき知ったばかりなので理解は追いついていない。
「つまり……なおっちゃんはもともと、この人気投票で軽音との差を見せつけようとしてたってわけ……?」
「そのとーり!」
えへん、と胸を張るナオだが、それならそうとわたしたちにはちゃんと言っておいてほしかった。危うくあの説明会の場所で、ほかの参加者の前で知った知らないとひと悶着起こすところだった。
「で? そのナルシー先輩のバンドと得票勝負することになったのかい?」
横で話を聞いてる店長は、なぜか楽しげだ。他人事だと思って。
「ナルシーじゃなくてナンシー先輩……もともとドラムのメンバー探してたときに先輩にも声かけてたんだけど、そのときにちーちゃんがライブ途中抜けしたことでねちねち言われちゃって……」
ナオが申し訳なさそうに語尾をしぼませる。ああ、だからわたしをドラムパートに行かせたくなかったのか。ようやく話が見えてきた。
「ごめんなさい、わたしのせいで苦労かけちゃって」
「ちーちゃんは悪くないよ。結局あの流れだったら、あたしたちの誰が行っても険悪なのには変わりなかったし」
結局、ドラムパートの打ち合わせにはナオが参加した。ナンシー先輩に宣戦布告した直後ということもあり、先輩に邪険にされるわ他の部員に心配されるわ、だいぶカオスだったそうだ。
「ライバルはほかのバンドみんなだけど……でもナンシー先輩のバンドは、軽音のなかでも結構人気だから、投票はそこに勝てれば! って感じかな」
「そういうのって、結局身内で票が回されるだけだろ。ほんとに勝てんの?」
てんちゃんの指摘にも、ナオは動じない。
「部内の票は来ないだろうねえ。でも、そこはあんまり期待してないよ」
「じゃあどこから……」
「知り合いが出てるからちょっと観に来た人とか、あともともとライブを観にくるつもりじゃなかった人とか。入口の近くだから、きっとそういう人もたくさん通ると思うんだ。あたしはそういう人たちに、少しでもあたしたちの音楽を届けたい。そういうパフォーマンスをしたい」
そう話すナオの表情は、Phantomのワンマンの楽屋で見たときと同じかそれ以上の決意と、自信に溢れていた。
「そうね、もう何もないわたしたちじゃないものね」
そう言うと、ナオはにこりと笑って、
「ちーちゃんも言ってたもんね、初心者の本気を聴かせてやるんだって」
あのときの台詞を繰り返されて、少し頬が熱くなる。勢いで言ってしまったけど、あれがわたしの、わたしたちの本心。先輩や、軽音への挑戦状だ。
「……初心者と舐めてかかってきたこと、後悔させてやりましょう」