音を重ねて。#6 Side Blue
文字数 790文字
「引き込めるかな」
「どう、かしら……」
「頑張って引き込もうよ!」
スタジオの階段を上がりながら、わたしたちの話題はさっきの練習からすでに次に移っていた。すなわち、ドラムのメンバーのターゲットについて。
「ちーちゃん、その子、どんな感じの子なの? いい子? 優しい子?」
「うーん……」
言葉を濁す。自分で話題に出しておいてアレなんだけど、あの子をバンドに誘うことは若干躊躇していた。もちろん悪い子じゃないし、音楽のセンスも持ち合わせてる。だけど、
「なんというか……クセが強いというか……」
わたしの言葉に、ナオもマキも頭からはてなを飛ばしている。そうこうしているうちに、楽器屋のカウンターまで戻ってきた。店長が鍵を受け取りながら、にこにこと話しかけてくる。
「どうだった、初めての合わせは。気持ちよかっただろ」
「ほんっとにサイコーでした! サイコー過ぎてあたし泣くかと思いました。いやーバンドってサイコーですね」
ナオがはきはきと答える。若干語彙が乏しくなってるけど、まあそこは目をつぶっておいて。店長も気軽に話しかけてくるタイプだけど、さっきが初対面だったとは思えない話しぶりに、ナオの誰とでも仲良くなれるスキルはこんなところにも発揮されるのか、と密かに感心する。
その流れで、「あのー……」とナオが切り込んでいく。
「実はあたしたちのバンド、まだドラムがいなくて……それで、店長さんのお子さんが、ドラムできるって聞いたんですけど……」
店長は一瞬目を丸くしてから、あはは、と豪快に笑った。
「あいつはやめとけ! 扱いが面倒だからな。ただでさえ友だち作るのも仲良くするのもへったくそなのに、テンがバンドなんて……」
「テン?」
マキが聞き返した、その背後から、
「勝手に他人 の話をするな!」
怒鳴り声が聞こえてきた。
「どう、かしら……」
「頑張って引き込もうよ!」
スタジオの階段を上がりながら、わたしたちの話題はさっきの練習からすでに次に移っていた。すなわち、ドラムのメンバーのターゲットについて。
「ちーちゃん、その子、どんな感じの子なの? いい子? 優しい子?」
「うーん……」
言葉を濁す。自分で話題に出しておいてアレなんだけど、あの子をバンドに誘うことは若干躊躇していた。もちろん悪い子じゃないし、音楽のセンスも持ち合わせてる。だけど、
「なんというか……クセが強いというか……」
わたしの言葉に、ナオもマキも頭からはてなを飛ばしている。そうこうしているうちに、楽器屋のカウンターまで戻ってきた。店長が鍵を受け取りながら、にこにこと話しかけてくる。
「どうだった、初めての合わせは。気持ちよかっただろ」
「ほんっとにサイコーでした! サイコー過ぎてあたし泣くかと思いました。いやーバンドってサイコーですね」
ナオがはきはきと答える。若干語彙が乏しくなってるけど、まあそこは目をつぶっておいて。店長も気軽に話しかけてくるタイプだけど、さっきが初対面だったとは思えない話しぶりに、ナオの誰とでも仲良くなれるスキルはこんなところにも発揮されるのか、と密かに感心する。
その流れで、「あのー……」とナオが切り込んでいく。
「実はあたしたちのバンド、まだドラムがいなくて……それで、店長さんのお子さんが、ドラムできるって聞いたんですけど……」
店長は一瞬目を丸くしてから、あはは、と豪快に笑った。
「あいつはやめとけ! 扱いが面倒だからな。ただでさえ友だち作るのも仲良くするのもへったくそなのに、テンがバンドなんて……」
「テン?」
マキが聞き返した、その背後から、
「勝手に
怒鳴り声が聞こえてきた。