トレジャーハント。 #1 Side Yellow
文字数 1,027文字
「ただ……いま……」
夜の十時過ぎ。あたしは自分の部屋に戻るなり、着替えもウィッグの手入れもそこそこにベッドに倒れ込んだ。連日の長時間トレーニングで、全身が悲鳴をあげている。しかも今日は試合形式の練習だったから、小手や脛を散々打たれたせいでジンジンする。
先週の対バンライブの直後から、あたしは夏休み恒例の、薙刀部の集中練習に参加していた。その間は全員集合してのバンド練習はおやすみ。もともとこの予定があったから、なおっちゃんが最初の本番を早めたんだろうと思うと、申し訳ない気持ちが湧いてくる。
それを知ってか知らずか、集中練の初日の夜に、なおっちゃんからメッセージが来てた。
『部活応援してる! あたしたちは足りないもの探ししておくから!』
力強い言葉。つい数日前にめちゃくちゃに凹んでたのとは別人みたいでちょっと笑っちゃったけど、でもなおっちゃんはこうでなくちゃ。
それからは、なおっちゃんもちなっちゃんも、練習で疲れてるあたしに気を遣ってか、連絡を一回もしてこなかった。バンドを組んでから、二人とこれだけ連絡を取らないのは初めてだ。
(二人とも、何してるのかな……)
そんなことをぼんやり思っていたら、唐突にスマホが鳴った。もしかして二人のどっちかから……? と思いながら確認すると、なんとメッセージはてんちゃんからだった。あれ、あたしてんちゃんと連絡先交換してたっけ。
メッセージを開くと、そこには何かのリンク先と、一言、
『この前のライブ映像、スマホ用に変換しました』
……ザ・業務連絡。文面から、いつものむすっとしたジト目が浮かんできて笑える。でも、ライブ映像のDVDをもらってきてくれたときといい、バンドには入らないと言いつつ、なんだかんだとあたしたちのことを気にかけてくれてるのが、なんか嬉しい。
『てんちゃん、送ってくれてありがとう! これから見るね!』
そう送ったらすぐに既読がついて、また一言。
『今日は遅いし疲れてるんだから寝てください』
至極ごもっとも。でも、あたしは返事もそこそこに、練習の疲れも忘れてリンクを開いた。DVDをなおっちゃんたちに預けたっきりだから、まだ一度もあのときの映像を見てないのだ。当日は他のバンドのことも、腰を据えて見られなかったし、一回はちゃんと見ておきたい。
みんなに任せてるだけじゃ、あたしの気が収まらない。あたしも早く、足りないものを見つけたかった。
夜の十時過ぎ。あたしは自分の部屋に戻るなり、着替えもウィッグの手入れもそこそこにベッドに倒れ込んだ。連日の長時間トレーニングで、全身が悲鳴をあげている。しかも今日は試合形式の練習だったから、小手や脛を散々打たれたせいでジンジンする。
先週の対バンライブの直後から、あたしは夏休み恒例の、薙刀部の集中練習に参加していた。その間は全員集合してのバンド練習はおやすみ。もともとこの予定があったから、なおっちゃんが最初の本番を早めたんだろうと思うと、申し訳ない気持ちが湧いてくる。
それを知ってか知らずか、集中練の初日の夜に、なおっちゃんからメッセージが来てた。
『部活応援してる! あたしたちは足りないもの探ししておくから!』
力強い言葉。つい数日前にめちゃくちゃに凹んでたのとは別人みたいでちょっと笑っちゃったけど、でもなおっちゃんはこうでなくちゃ。
それからは、なおっちゃんもちなっちゃんも、練習で疲れてるあたしに気を遣ってか、連絡を一回もしてこなかった。バンドを組んでから、二人とこれだけ連絡を取らないのは初めてだ。
(二人とも、何してるのかな……)
そんなことをぼんやり思っていたら、唐突にスマホが鳴った。もしかして二人のどっちかから……? と思いながら確認すると、なんとメッセージはてんちゃんからだった。あれ、あたしてんちゃんと連絡先交換してたっけ。
メッセージを開くと、そこには何かのリンク先と、一言、
『この前のライブ映像、スマホ用に変換しました』
……ザ・業務連絡。文面から、いつものむすっとしたジト目が浮かんできて笑える。でも、ライブ映像のDVDをもらってきてくれたときといい、バンドには入らないと言いつつ、なんだかんだとあたしたちのことを気にかけてくれてるのが、なんか嬉しい。
『てんちゃん、送ってくれてありがとう! これから見るね!』
そう送ったらすぐに既読がついて、また一言。
『今日は遅いし疲れてるんだから寝てください』
至極ごもっとも。でも、あたしは返事もそこそこに、練習の疲れも忘れてリンクを開いた。DVDをなおっちゃんたちに預けたっきりだから、まだ一度もあのときの映像を見てないのだ。当日は他のバンドのことも、腰を据えて見られなかったし、一回はちゃんと見ておきたい。
みんなに任せてるだけじゃ、あたしの気が収まらない。あたしも早く、足りないものを見つけたかった。