トレジャーハント。 #4 Side Red
文字数 1,172文字
「なに考えてんだろうね、あの、コウ……さん? 三年生なんだっけ、さん付けのほうがいいかな?」
「なんでもいいんじゃない」
首を傾げるまきちゃんの横で、ちーちゃんはずっと不機嫌そうな顔をしてる。
まきちゃんの強化練も明けた日曜日。あたしたちは、この前対バンライブをやったライブハウスに向かっていた。今日そこで、Phantomのワンマンライブが行われるらしい。
「でも招待なんてラッキーじゃん? ありがたくもらっとこうよ」
あたしの言葉に、ちーちゃんはますますむすっとして、
「あの人と同じようなこと言わないで。こういうの、借りができたみたいで嫌なんだけど」
その情報と、ライブの招待チケットを持ってきたのは、当の不機嫌なちーちゃんだった。バイト中にスタジオに来たコウさんから直接チケットを渡されたらしく、それからずっと刺々しい……とは、そのときたまたまスタッフルームにいたてんちゃん談。
「なんか受付でナンパなやつに絡まれてると思ったらさ……くそ、一発お見舞いしてやればよかった」
てんちゃんもつられて、いつも以上にトゲトゲしてる。でもなんで攻撃的になるかなあ。何があったのかは知らないけど、暴力沙汰だけはやめてほしい。
ライブハウスの受付には、あの日、あたしたちとコウさんのあいだに割って入った男の子が座ってた。彼はあたしたちを見るなり、
「この前はごめんね、コウがいきなりいろいろ言っちゃって」
と、開口一番に謝ってきた。
「いえ……でもあのおかげで、あたしたち気づくことあったんで」
あたしがそう答えたら、彼は「いい子だね、キミたち」と目を細めて笑った。
「いい子だし、強いよ。おれだったらキレてそうだもん」
およそ『キレる』とは縁がなさそうな朗らかな表情に向かって、てんちゃんとちーちゃんが口々に反論する。
「キレてないと思ったら大間違いだからな」
「ご指摘はともかく、言い方はもう少し考えたほうがいいとは思ってましたが」
「ちょっと二人とも落ち着いて……」
無遠慮な二人を宥めてると、その男の子はまた目を細めて、
「でも、あのときとは全然表情が違うね。さすが、コウが目を付けただけある」
「え……あたしたち、なんか目付けられるようなことしましたか……?」
まきちゃんが戦々恐々と尋ねると、あはは、と声を上げて笑われた。
「そんなに怖がらないでよ! コウはキミたちに期待してるんだから」
期待? あたしたちが揃って首を傾げていたら、彼があたしたちの後ろに目線を投げて、
「おっと、後ろ並んじゃった……それじゃ、またあとでね。ライブ楽しんで」
あたしたちは追い立てられるように受付の奥へと進んだ。みんなして首を傾げたまま。
「あたしたち、何を期待されてるんだろ……?」
「なんでもいいんじゃない」
首を傾げるまきちゃんの横で、ちーちゃんはずっと不機嫌そうな顔をしてる。
まきちゃんの強化練も明けた日曜日。あたしたちは、この前対バンライブをやったライブハウスに向かっていた。今日そこで、Phantomのワンマンライブが行われるらしい。
「でも招待なんてラッキーじゃん? ありがたくもらっとこうよ」
あたしの言葉に、ちーちゃんはますますむすっとして、
「あの人と同じようなこと言わないで。こういうの、借りができたみたいで嫌なんだけど」
その情報と、ライブの招待チケットを持ってきたのは、当の不機嫌なちーちゃんだった。バイト中にスタジオに来たコウさんから直接チケットを渡されたらしく、それからずっと刺々しい……とは、そのときたまたまスタッフルームにいたてんちゃん談。
「なんか受付でナンパなやつに絡まれてると思ったらさ……くそ、一発お見舞いしてやればよかった」
てんちゃんもつられて、いつも以上にトゲトゲしてる。でもなんで攻撃的になるかなあ。何があったのかは知らないけど、暴力沙汰だけはやめてほしい。
ライブハウスの受付には、あの日、あたしたちとコウさんのあいだに割って入った男の子が座ってた。彼はあたしたちを見るなり、
「この前はごめんね、コウがいきなりいろいろ言っちゃって」
と、開口一番に謝ってきた。
「いえ……でもあのおかげで、あたしたち気づくことあったんで」
あたしがそう答えたら、彼は「いい子だね、キミたち」と目を細めて笑った。
「いい子だし、強いよ。おれだったらキレてそうだもん」
およそ『キレる』とは縁がなさそうな朗らかな表情に向かって、てんちゃんとちーちゃんが口々に反論する。
「キレてないと思ったら大間違いだからな」
「ご指摘はともかく、言い方はもう少し考えたほうがいいとは思ってましたが」
「ちょっと二人とも落ち着いて……」
無遠慮な二人を宥めてると、その男の子はまた目を細めて、
「でも、あのときとは全然表情が違うね。さすが、コウが目を付けただけある」
「え……あたしたち、なんか目付けられるようなことしましたか……?」
まきちゃんが戦々恐々と尋ねると、あはは、と声を上げて笑われた。
「そんなに怖がらないでよ! コウはキミたちに期待してるんだから」
期待? あたしたちが揃って首を傾げていたら、彼があたしたちの後ろに目線を投げて、
「おっと、後ろ並んじゃった……それじゃ、またあとでね。ライブ楽しんで」
あたしたちは追い立てられるように受付の奥へと進んだ。みんなして首を傾げたまま。
「あたしたち、何を期待されてるんだろ……?」