空白を埋める人。#3 Side Blue
文字数 763文字
「……どうしたのかしら突然」
ナオから届いたメッセージを見て、思わず首を傾げる。そういえば、話し合いのときにはあまりしゃべってなかった気もするけど、このことを考えていたのだろうか。
彼女からの少し長めのメッセージは、こう締められていた。
『てんちゃんがどうして一人がいいか、きいてみてもらえる?』
たしかに、今までてんちゃんがひとりで音楽をすることについて、もちろん否定はしなかったけど、「何故ひとりがいいか」を訊いたことも、考えたこともなかった。なにより訊く必要がなかった。
彼女をバンドに誘おうとしているいま、その情報は必要なものかもしれない。わたしたちが次に進むためにも。
(もしバンド断られたら、訊いてみる……と)
わたしはナオにそうメッセージを返して、スタンドに立ててあったギターと携帯を持ち替えた。机の上には、書き込みだらけのバンドスコア。今日の合わせのおさらいをしている最中だったのだ。
指を弦の上に走らせると、スタジオの中で響いていた音が頭の中によみがえってくる。いつも使ってる部屋なのに、いつもより熱くて。重なった音の中で、自分のギターの音でさえもいつもと違って聴こえて。だからこそ見つかった粗だったり、バランスの崩れだったりを整えていく作業は、苦になるどころか楽しいくらいだ。
いい音を模索していくほど、ギターは応えてくれるのをわたしは知っている。いまダメなところは伸びしろだ。わたしは、わたしたちはもっとよくなれる。
ただ、三人だけで頑張ってもどうしても埋まらない、音の空白があった。まだ聴こえないバスドラムの重低音が、シンバルの華やかな響きが恋しい。
(メトロノームじゃ、ダメ……)
ピコピコと規則正しく刻む音が、音の空白を埋める、でもあの空間で唯一耳障りな音だった。
ナオから届いたメッセージを見て、思わず首を傾げる。そういえば、話し合いのときにはあまりしゃべってなかった気もするけど、このことを考えていたのだろうか。
彼女からの少し長めのメッセージは、こう締められていた。
『てんちゃんがどうして一人がいいか、きいてみてもらえる?』
たしかに、今までてんちゃんがひとりで音楽をすることについて、もちろん否定はしなかったけど、「何故ひとりがいいか」を訊いたことも、考えたこともなかった。なにより訊く必要がなかった。
彼女をバンドに誘おうとしているいま、その情報は必要なものかもしれない。わたしたちが次に進むためにも。
(もしバンド断られたら、訊いてみる……と)
わたしはナオにそうメッセージを返して、スタンドに立ててあったギターと携帯を持ち替えた。机の上には、書き込みだらけのバンドスコア。今日の合わせのおさらいをしている最中だったのだ。
指を弦の上に走らせると、スタジオの中で響いていた音が頭の中によみがえってくる。いつも使ってる部屋なのに、いつもより熱くて。重なった音の中で、自分のギターの音でさえもいつもと違って聴こえて。だからこそ見つかった粗だったり、バランスの崩れだったりを整えていく作業は、苦になるどころか楽しいくらいだ。
いい音を模索していくほど、ギターは応えてくれるのをわたしは知っている。いまダメなところは伸びしろだ。わたしは、わたしたちはもっとよくなれる。
ただ、三人だけで頑張ってもどうしても埋まらない、音の空白があった。まだ聴こえないバスドラムの重低音が、シンバルの華やかな響きが恋しい。
(メトロノームじゃ、ダメ……)
ピコピコと規則正しく刻む音が、音の空白を埋める、でもあの空間で唯一耳障りな音だった。