何もないまま。#1 Side Blue
文字数 1,212文字
「てんちゃんの学校とうちの学校、学園祭かぶってなくてよかったー……」
てんちゃんから預かったスケジュールを見ながら、ナオが安堵の声を上げる。せっかくサポートのメンバーが決まったのに、本番の予定が合わなかったら元も子もない。
てんちゃんがドラムのサポートをしてくれると正式に決まった後、わたしたちはまたファミレスで次の目標に向けての作戦会議を行っていた。次の目標は、ステージで演奏を披露すること。
「学園祭は外せないよね、軽音との直接対決!」
どこから探してきたのだろう、去年の学園祭のステージ写真を携帯で眺めながら、マキが熱っぽく言う。たしかに、『軽音よりもすごい』ことを証明する場として、これ以上の格好の舞台はないだろう。ナオも同意なようで、
「有志団体の出演手続き、実行委員に確認しておくね」
と、さっそくメッセージを打ち始める。その横で、わたしはギターケースから一枚の紙を取り出してテーブルに置いた。
「そこで全力を出すためにも……ここで腕慣らし、ってことね」
さっきスタジオを出るときに店長がくれた、高校生向けの対バンライブのフライヤーだった。近所のライブハウスで月に一回開催してるイベントで、スタジオにもポスターが貼ってある。まずはここで、ステージに慣れておこうという算段だ。
「夏休み期間はほぼ毎週やってるらしいから、全員の都合のつくタイミングで、どんな感じか事前に観に行ってもいいわね」
「いや、早いうちにどーんと一発かましてやろうよ、初参加で話題かっさらっちゃってさ」
マキはずいぶんと強気だ。携帯の画面を、学園祭の写真から音声レコーダーに切り替える。
「だって、さっきの練習でこんなに完成形まで持っていけたんだよ、早く聴いてもらいたいじゃん!」
さっき、てんちゃんを含めて何回か合わせたとき、最後のテイクを録音していたのだ。軽く聴かせてもらった感じ、前回の合わせで挙げた改善点は全部クリアして、さらに個別に音がブラッシュアップされている。
「直すところもほとんどないし、録音でこんなに『聴ける』のは、たしかに早くお披露目したいところではあるけど……」
あとは、この音をステージでも確実に鳴らせるように練習を重ねないと……そう言おうとするわたしを、メッセージを送り終えたナオが遮った。
「もう一曲、一週間で仕上がると思う?」
「えっ……一週間後に出るつもり? しかももう一曲?」
「いいね、一曲だけだと映えないしね」マキもノリノリで答える。「メンバーも集まったし、この勢いに乗らないと!」
わたしの心配をよそに、ふたりはすでにお祭りテンションだ。ふたりがやる気なら、わたしも全力でいくほか選択肢はない。
「この曲と同じレベルに仕上げられるかは……みんな次第だから。スパルタでいくよ」
「そうこなくっちゃ」
かくして、わたしたちの最初のステージが決まった。
てんちゃんから預かったスケジュールを見ながら、ナオが安堵の声を上げる。せっかくサポートのメンバーが決まったのに、本番の予定が合わなかったら元も子もない。
てんちゃんがドラムのサポートをしてくれると正式に決まった後、わたしたちはまたファミレスで次の目標に向けての作戦会議を行っていた。次の目標は、ステージで演奏を披露すること。
「学園祭は外せないよね、軽音との直接対決!」
どこから探してきたのだろう、去年の学園祭のステージ写真を携帯で眺めながら、マキが熱っぽく言う。たしかに、『軽音よりもすごい』ことを証明する場として、これ以上の格好の舞台はないだろう。ナオも同意なようで、
「有志団体の出演手続き、実行委員に確認しておくね」
と、さっそくメッセージを打ち始める。その横で、わたしはギターケースから一枚の紙を取り出してテーブルに置いた。
「そこで全力を出すためにも……ここで腕慣らし、ってことね」
さっきスタジオを出るときに店長がくれた、高校生向けの対バンライブのフライヤーだった。近所のライブハウスで月に一回開催してるイベントで、スタジオにもポスターが貼ってある。まずはここで、ステージに慣れておこうという算段だ。
「夏休み期間はほぼ毎週やってるらしいから、全員の都合のつくタイミングで、どんな感じか事前に観に行ってもいいわね」
「いや、早いうちにどーんと一発かましてやろうよ、初参加で話題かっさらっちゃってさ」
マキはずいぶんと強気だ。携帯の画面を、学園祭の写真から音声レコーダーに切り替える。
「だって、さっきの練習でこんなに完成形まで持っていけたんだよ、早く聴いてもらいたいじゃん!」
さっき、てんちゃんを含めて何回か合わせたとき、最後のテイクを録音していたのだ。軽く聴かせてもらった感じ、前回の合わせで挙げた改善点は全部クリアして、さらに個別に音がブラッシュアップされている。
「直すところもほとんどないし、録音でこんなに『聴ける』のは、たしかに早くお披露目したいところではあるけど……」
あとは、この音をステージでも確実に鳴らせるように練習を重ねないと……そう言おうとするわたしを、メッセージを送り終えたナオが遮った。
「もう一曲、一週間で仕上がると思う?」
「えっ……一週間後に出るつもり? しかももう一曲?」
「いいね、一曲だけだと映えないしね」マキもノリノリで答える。「メンバーも集まったし、この勢いに乗らないと!」
わたしの心配をよそに、ふたりはすでにお祭りテンションだ。ふたりがやる気なら、わたしも全力でいくほか選択肢はない。
「この曲と同じレベルに仕上げられるかは……みんな次第だから。スパルタでいくよ」
「そうこなくっちゃ」
かくして、わたしたちの最初のステージが決まった。