宝石のように。 #2 Side Red
文字数 1,285文字
「ちなっちゃん、テスト、どうだった……?」
「ノーコメント」
お昼休み。まきちゃんの問いかけに、ちーちゃんはきっぱり回答拒否した。お弁当をつつくちーちゃんの顔は、虚無。こんなちーちゃんの表情初めて見た。
かくいうあたしも結果は散々だったので、その隣であはは……と笑ってみせる。午後のテスト返却が恐ろしい。
「出来るならテスト受け取らずに帰りたいよね……」
「まったく同感だわ……でもぐずぐず言ってられないし、今はこっちに集中しないと」
ふーっと深呼吸をすると、いつものきりっとしたちーちゃんに戻った。切り替えが早いというか、一周回って開き直ってるというか。
「で、今日は今後の目標を決めたい……で、合ってる?」
「さすがちなっちゃん、話が早いね。朝なおっちゃんとも話してたんだ、こんなふうになりたいっていうのを、みんなで共有しないとねって」
まきちゃんがお弁当の横に手帳の白紙ページを広げながら、あたしたちの顔を交互に見る。あたしはさっそくそこに手を出して、大きく『笑顔!』と書き込んだ。
「あたしは、観てる人を楽しませたい。でもそのためには、あたしが楽しいってところを見せられるようにならないとなって。まずは表情」
「あんなむずかしー顔してたら、お客さん楽しめないもんね」
まきちゃんに『むずかしー顔』でからかわれて、むーっと口をとがらせてみせる。その横から、ちーちゃんが手帳に丁寧に書き込んだのは、『魅せ方』。
「わたしは、パフォーマンスに気をつけたい。演奏の質を落とさずに、見た目とか動きとか、ちゃんと魅せられるように」
「あたし、ギターソロのときにちーちゃんが真ん中のほうに出てきたらカッコいいと思う!」
「ありがと……そういう演出の仕方とかは、ナオやマキとも相談したいと思って」
「もちろん! バンド全体がカッコよく魅せられるようにしたいよね!」
そう力説するまきちゃんの前に、ちーちゃんが手帳を戻した。
「次、マキの番」
「あ、あたしは……」
まきちゃんはなぜか少し躊躇ってから、気持ち小さめに書き込んだ。そこには、
「『余裕』?」
「うん。なんかこの前のイベント、どのバンドも余裕というか、ライブ慣れてます感があってさ。正直あたし、やってるうちにどんどん余裕なくなっちゃったから、かっこいい演奏をとかの前に、まずそういうの身につけたいな、って」
二人みたいな魅せ方見られ方というより、自分の心持ちの問題なんだけど。そう照れ笑いするまきちゃんに、ちーちゃんが真面目な顔で、
「……さすがね」
「へ?」
「これって、わたしたちみんなに必要なものじゃない? 余裕がないと笑顔にもなれないし、いいパフォーマンスもできないから」
あたしもその横で頷いた。ステージで笑顔でいるためにはどうしたらいいかって考えてたところだったから、まきちゃんの『なりたい』はその答えのひとつだと思った。
「じゃあ、『余裕』がみんなの第一目標ね」
あたしが花丸を書き足すと、ちーちゃんがカレンダーのページまで手帳をめくった。
「そのためには、本番までのスケジューリングをちゃんとしないと。そろそろ演奏する曲を絞ったほうがいいわ」
「ノーコメント」
お昼休み。まきちゃんの問いかけに、ちーちゃんはきっぱり回答拒否した。お弁当をつつくちーちゃんの顔は、虚無。こんなちーちゃんの表情初めて見た。
かくいうあたしも結果は散々だったので、その隣であはは……と笑ってみせる。午後のテスト返却が恐ろしい。
「出来るならテスト受け取らずに帰りたいよね……」
「まったく同感だわ……でもぐずぐず言ってられないし、今はこっちに集中しないと」
ふーっと深呼吸をすると、いつものきりっとしたちーちゃんに戻った。切り替えが早いというか、一周回って開き直ってるというか。
「で、今日は今後の目標を決めたい……で、合ってる?」
「さすがちなっちゃん、話が早いね。朝なおっちゃんとも話してたんだ、こんなふうになりたいっていうのを、みんなで共有しないとねって」
まきちゃんがお弁当の横に手帳の白紙ページを広げながら、あたしたちの顔を交互に見る。あたしはさっそくそこに手を出して、大きく『笑顔!』と書き込んだ。
「あたしは、観てる人を楽しませたい。でもそのためには、あたしが楽しいってところを見せられるようにならないとなって。まずは表情」
「あんなむずかしー顔してたら、お客さん楽しめないもんね」
まきちゃんに『むずかしー顔』でからかわれて、むーっと口をとがらせてみせる。その横から、ちーちゃんが手帳に丁寧に書き込んだのは、『魅せ方』。
「わたしは、パフォーマンスに気をつけたい。演奏の質を落とさずに、見た目とか動きとか、ちゃんと魅せられるように」
「あたし、ギターソロのときにちーちゃんが真ん中のほうに出てきたらカッコいいと思う!」
「ありがと……そういう演出の仕方とかは、ナオやマキとも相談したいと思って」
「もちろん! バンド全体がカッコよく魅せられるようにしたいよね!」
そう力説するまきちゃんの前に、ちーちゃんが手帳を戻した。
「次、マキの番」
「あ、あたしは……」
まきちゃんはなぜか少し躊躇ってから、気持ち小さめに書き込んだ。そこには、
「『余裕』?」
「うん。なんかこの前のイベント、どのバンドも余裕というか、ライブ慣れてます感があってさ。正直あたし、やってるうちにどんどん余裕なくなっちゃったから、かっこいい演奏をとかの前に、まずそういうの身につけたいな、って」
二人みたいな魅せ方見られ方というより、自分の心持ちの問題なんだけど。そう照れ笑いするまきちゃんに、ちーちゃんが真面目な顔で、
「……さすがね」
「へ?」
「これって、わたしたちみんなに必要なものじゃない? 余裕がないと笑顔にもなれないし、いいパフォーマンスもできないから」
あたしもその横で頷いた。ステージで笑顔でいるためにはどうしたらいいかって考えてたところだったから、まきちゃんの『なりたい』はその答えのひとつだと思った。
「じゃあ、『余裕』がみんなの第一目標ね」
あたしが花丸を書き足すと、ちーちゃんがカレンダーのページまで手帳をめくった。
「そのためには、本番までのスケジューリングをちゃんとしないと。そろそろ演奏する曲を絞ったほうがいいわ」