音を重ねて。#7 Side Blue
文字数 936文字
振り返ると、制服姿の女の子が立っていた。近くの高校の制服……なんだけど、紐ネクタイを結ばずに、飾りをつけてループタイのようにしているのは、この子以外に見かけたことがない。
目をきっ、と吊り上げて、相当ご立腹な様子のその子は店長に詰め寄って、結構な勢いでまくしたてた。
「知らない人に勝手に他人 の話をするなっていつも言ってるだろこのアホ親父! 情報漏洩! プライバシーの侵害!」
「あーはいはい、大変なご時世ですねえ」
「ちゃんと聞け! このご時世そういう些細な情報漏洩からストーカーに発展したりするんだよ! ボクが付け回されたりしたら責任とれる!?」
「飛躍したねえ。誰もおまえさんなんかストーカーしようなんて思わんよ」
「はぁ!?」
あの、ここ一応お店の中なんだけど……。ふたりの言い合いが激しくて、他のお客さんの視線が気になる。けど、今いるのはみんな常連さんで、いつものアレかという呆れ笑いで見てくれていた。まあつまり、日常茶飯事。
むしろいちばんびっくりしてるのはナオとマキなんじゃないかしら。ちらりと隣を見やると、案の定、ふたりとも表情が引きつっていた。完全に気圧されてる。
「あと、知らない人じゃない人もいるからな、よく見な」
「……あ、サクラ」
店長に指摘され勢いよく振り返った彼女は、わたしを見つけると不機嫌ながらもちょっとだけ表情を和らげた。
「……今日、練習の日じゃないよね」
「今日はお客なんだけど……」
「ちーちゃん、この子が、例の……?」
「そう、店長の娘さんの、てんちゃん」
「天音 !」
いつもならそう呼ばせてくれるのに、今日は虫の居所が悪いらしい。天音ちゃん はまた肩を怒らせて、カウンターの奥のスタッフルームに向かった。店長が慌てて呼び止める。
「テン! サクラちゃんたちドラムができる人を――」
「知らない!」
けど、聞く耳持たず。彼女は嵐のような勢いで、ドアの向こうに消えていった。
「……ちょっと、あの子は難しそうかなあ」
貼り付けたような笑いを浮かべながら、ナオがつぶやいた。わたしが心配していたのとは別次元で、あの子の第一印象は最悪になってしまったみたいだ。
目をきっ、と吊り上げて、相当ご立腹な様子のその子は店長に詰め寄って、結構な勢いでまくしたてた。
「知らない人に勝手に
「あーはいはい、大変なご時世ですねえ」
「ちゃんと聞け! このご時世そういう些細な情報漏洩からストーカーに発展したりするんだよ! ボクが付け回されたりしたら責任とれる!?」
「飛躍したねえ。誰もおまえさんなんかストーカーしようなんて思わんよ」
「はぁ!?」
あの、ここ一応お店の中なんだけど……。ふたりの言い合いが激しくて、他のお客さんの視線が気になる。けど、今いるのはみんな常連さんで、いつものアレかという呆れ笑いで見てくれていた。まあつまり、日常茶飯事。
むしろいちばんびっくりしてるのはナオとマキなんじゃないかしら。ちらりと隣を見やると、案の定、ふたりとも表情が引きつっていた。完全に気圧されてる。
「あと、知らない人じゃない人もいるからな、よく見な」
「……あ、サクラ」
店長に指摘され勢いよく振り返った彼女は、わたしを見つけると不機嫌ながらもちょっとだけ表情を和らげた。
「……今日、練習の日じゃないよね」
「今日はお客なんだけど……」
「ちーちゃん、この子が、例の……?」
「そう、店長の娘さんの、てんちゃん」
「
いつもならそう呼ばせてくれるのに、今日は虫の居所が悪いらしい。
「テン! サクラちゃんたちドラムができる人を――」
「知らない!」
けど、聞く耳持たず。彼女は嵐のような勢いで、ドアの向こうに消えていった。
「……ちょっと、あの子は難しそうかなあ」
貼り付けたような笑いを浮かべながら、ナオがつぶやいた。わたしが心配していたのとは別次元で、あの子の第一印象は最悪になってしまったみたいだ。