4 和宏と平田
文字数 1,618文字
「メッセージの内容にびっくりしましたよ」
「急にごめん」
翌日、優人は一限があると言うのでその間、平田に家に来てもらうことにしてのである。
「優人、怪しんでなかった?」
「いや、特には」
どんな理由を告げたのかは分からないが、優人の許可を得ているので大丈夫だと言う平田。これで安心して話が出来そうである。
「飲み物、紅茶しかないんだけど」
和宏が冷蔵庫を覗きながら彼にそう告げれば、
「お気遣いなく」
と丁寧な返事。
「カウンターの方で良かったの?」
平田の前にアイスティーのグラスを置くと和宏は隣に腰かけながら。
「慣れているところのほうが話易いのでは?」
彼は変わらず落ち着いた様子で和宏を気遣ってくれる。
「これ、先日優人が買ってきたクッキーなんだけど、良かったら」
「和宏さんって……」
「ん?」
缶を開け、皿に移しながら応対していた和宏は顔を上げ彼の方に視線を移す。
「初めの頃はクールな印象があったけど、人見知り?」
「あ、いや。そんなことはないよ」
確かに初めの頃は彼に対し、塩対応だった自分。
それは単に優人と仲の良い彼を煙たがっていたからだ。
平田の人となりを知り、自然と変わっていった和宏。今は羨ましいとは思うものの、以前のような嫉妬心はなりを潜めている。
そこには一貫して、優人にとって彼が友人であることに変わりないという態度でいることも要因の一つだと思えた。
どんなに彼が素敵であろうが、自分を理解してくれていようが友人以上にはなりえない。和宏以外に恋愛感情を持ちえないと優人が言うから。
それでも人の気持ちとは変わるもので、この先の保障は何処にもない。だからこそ皆、努力をするのだ。
もちろん自分も努力をしているつもりではあるが、それを評価するのが相手である以上、不安は付きまとう。
その後、話は本題へと入っていく。
和宏の話をうんうんと相槌を打ちながら聞いていた平田は話を聞き終えると、予想通りの言葉を口にする。
「優人は、望めばなんでもしてくれると思いますよ?」
「うん、それは俺もそうだとは思うけれど、それじゃ意味がないというか……やらせていると思ってしまうから」
「なるほど。そっか」
彼は考え込むような仕草をしたあと、
「でもそれは時間が解決してくれる気がします。どんなことを望んでいるのかは分からないけれど、優人が”恋人という立場”に多少なりとも固執しているなら”恋人らしさ”についても考えているでしょうし」
優人は思慮深いと思う。少なくとも衝動的に行動するタイプではない。
だがその過程について話すことは少ないため、どうしてそういう結論に至ったのか分からないことは多い。
だが優人をよく観察している平田が言うならそうなのだろうと和宏は思った。
「問題はもう一つの方ですね。俺も下に兄弟がいるので言っていることは共感できます」
以前敬語は良いよと言ったのに彼は相変わらずだ。
「それについて考えてみたのですが」
彼は前置きをしてから自分の考えを話してくれた。そこに何か解決の糸口は見つかるのだろうか。ささやかな希望を抱く。
「家族って言うのは、確かに普段の様子も知っているし、それなりに話もするとは思うんですよ。けれども、選んで家族となるのは他人であるパートナーだけですよね?」
平田が着目したのは『夫婦などのパートナー』と『兄弟や子』の家族となる成り立ちについて。
この場合の『子や兄弟』に関しては血が繋がっているもの限定。
『パートナー』に関しては血の繋がらない他人限定とした。
で、ないと話がややこしくなるようだ。
「パートナー選びって、友人を作るのと過程が似ていると思うんですよ。そこに兄弟や家族との大きな違いがあると思うんですよね」
友人やパートナーとは価値観の相違などによって自然と引き合うものである。それに比べ、家族とはそういう経緯を得ずに家族となるもの。
そこに和宏が羨ましいと思ってしまう理由があると彼は言ったのだった。
「急にごめん」
翌日、優人は一限があると言うのでその間、平田に家に来てもらうことにしてのである。
「優人、怪しんでなかった?」
「いや、特には」
どんな理由を告げたのかは分からないが、優人の許可を得ているので大丈夫だと言う平田。これで安心して話が出来そうである。
「飲み物、紅茶しかないんだけど」
和宏が冷蔵庫を覗きながら彼にそう告げれば、
「お気遣いなく」
と丁寧な返事。
「カウンターの方で良かったの?」
平田の前にアイスティーのグラスを置くと和宏は隣に腰かけながら。
「慣れているところのほうが話易いのでは?」
彼は変わらず落ち着いた様子で和宏を気遣ってくれる。
「これ、先日優人が買ってきたクッキーなんだけど、良かったら」
「和宏さんって……」
「ん?」
缶を開け、皿に移しながら応対していた和宏は顔を上げ彼の方に視線を移す。
「初めの頃はクールな印象があったけど、人見知り?」
「あ、いや。そんなことはないよ」
確かに初めの頃は彼に対し、塩対応だった自分。
それは単に優人と仲の良い彼を煙たがっていたからだ。
平田の人となりを知り、自然と変わっていった和宏。今は羨ましいとは思うものの、以前のような嫉妬心はなりを潜めている。
そこには一貫して、優人にとって彼が友人であることに変わりないという態度でいることも要因の一つだと思えた。
どんなに彼が素敵であろうが、自分を理解してくれていようが友人以上にはなりえない。和宏以外に恋愛感情を持ちえないと優人が言うから。
それでも人の気持ちとは変わるもので、この先の保障は何処にもない。だからこそ皆、努力をするのだ。
もちろん自分も努力をしているつもりではあるが、それを評価するのが相手である以上、不安は付きまとう。
その後、話は本題へと入っていく。
和宏の話をうんうんと相槌を打ちながら聞いていた平田は話を聞き終えると、予想通りの言葉を口にする。
「優人は、望めばなんでもしてくれると思いますよ?」
「うん、それは俺もそうだとは思うけれど、それじゃ意味がないというか……やらせていると思ってしまうから」
「なるほど。そっか」
彼は考え込むような仕草をしたあと、
「でもそれは時間が解決してくれる気がします。どんなことを望んでいるのかは分からないけれど、優人が”恋人という立場”に多少なりとも固執しているなら”恋人らしさ”についても考えているでしょうし」
優人は思慮深いと思う。少なくとも衝動的に行動するタイプではない。
だがその過程について話すことは少ないため、どうしてそういう結論に至ったのか分からないことは多い。
だが優人をよく観察している平田が言うならそうなのだろうと和宏は思った。
「問題はもう一つの方ですね。俺も下に兄弟がいるので言っていることは共感できます」
以前敬語は良いよと言ったのに彼は相変わらずだ。
「それについて考えてみたのですが」
彼は前置きをしてから自分の考えを話してくれた。そこに何か解決の糸口は見つかるのだろうか。ささやかな希望を抱く。
「家族って言うのは、確かに普段の様子も知っているし、それなりに話もするとは思うんですよ。けれども、選んで家族となるのは他人であるパートナーだけですよね?」
平田が着目したのは『夫婦などのパートナー』と『兄弟や子』の家族となる成り立ちについて。
この場合の『子や兄弟』に関しては血が繋がっているもの限定。
『パートナー』に関しては血の繋がらない他人限定とした。
で、ないと話がややこしくなるようだ。
「パートナー選びって、友人を作るのと過程が似ていると思うんですよ。そこに兄弟や家族との大きな違いがあると思うんですよね」
友人やパートナーとは価値観の相違などによって自然と引き合うものである。それに比べ、家族とはそういう経緯を得ずに家族となるもの。
そこに和宏が羨ましいと思ってしまう理由があると彼は言ったのだった。
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