5 嫉妬との決別を【R】
文字数 1,589文字
蕾に自分自身を宛がい、腰を前に進める。
よく慣らしたおかげか、吸い込まれるように中へ。
「んん……ッ」
腕で口を覆い、ぎゅっと瞳を閉じる兄。
最奥まで穿つ頃には、目に涙を浮かべていた。
「痛いの?」
優人の言葉に首を横に振る彼。
本来入れるところではないところへ挿れているのだから、苦しいのだろう。それも、きっと初めのうちだけ。
世の中にはいろんな人がいる。
身体の繋がりを快楽と感じ、誰とでも性交を行えるものもいればそうでない人もいるだろう。
少なくとも、自分と兄は好きでもない人と身体を重ねたいとは思っていない。それでも不安にはなる。
この行為は間違いではないだろうか?
兄は望んでいるのだろうか?
「優人……ッ」
腰を引けば、切なげに彼が優人の名を呼ぶ。
ここに居るよと言うように、その身体を抱きしめる。
全てを打ち消すように快楽を求めても、罪悪感は残るのだ。
──欲しがってよ。
不安をかき消すくらい。
阿貴も触れたであろう肌。
滑らかで吸い付くようなその肌を撫でる。
この心を嫉妬が付きまとうのは、無力だったからだ。
自分の前から兄が姿を消しても、追うことすら叶わなかった自分。逢いたいと強く懇願すれば、違う道が開けたかもしれないのに現実から目を背けた。
自分は諦めたのだ。
だからこんなにも後悔している。
諦めなければ、兄をもっと早く阿貴の手から奪い返せたかもしれないのに。
今の自分にできることなどたかが知れている。自分の腕の中で善がる兄が、この行為にせめて嫌悪を感じないように祈るだけ。
部屋に優しい音楽が流れる。
愛を紡ぐように穏やかに。
「ああ……ッ」
何度も腰を引いては進める優人にしっかりとしがみつきながら、甘い声を漏らす兄。その繋がった場所からは厭らしい音を立てながら。
「好き……」
「俺も好きだよ」
彼の想いに応えながら、自分自身と戦う。
阿貴に会おうと思った。
会って決別しなければならない。この嫉妬と。
兄の首筋に吸い付き、髪を撫でる。
溺れてしまいたい。どこまでも。
「はあッ……」
浅く息をする兄。二人の間に存在する彼自身が感じていることを示していた。
「気持ちいい?」
「ん……」
答える代わりに、上気して潤んだ瞳がこちらを見つめる。
「俺も」
同意をしたつもりなのに、彼はさらに顔を赤らめて奥をキュッと締め付けた。
「そんなに締め付けないでよ。達 っちゃうじゃない」
と優人がクスリと笑うと、”意地悪”と恨み言を言われてしまった。
──意地悪って……。
可愛いなあと思いながら彼自身に指を絡めつつ、その唇に口づける。
「ねえ。一緒に達 きたい」
優人が兄にそう告げると、彼はゆっくりと瞬きをしたのだった。
「さて……」
何度も達 かされ、疲れ切った兄はそのまま眠ってしまった。
優人はその身体を優しく拭い、ベッドに再び腰かける。
問題は、どのようにして阿貴に会うかだ。あの男の連絡先は知っている。自分と手を組みたいと言った、社長の連絡先は。
ただ、彼が何を考えているのかいまいちわからない。
そもそも阿貴がどのようにしてあの男と愛人関係になったのかすらわからない。あの男は阿貴を愛人だと断言し、執着しているようには見える。
阿貴が養子になったのは『母の兄の娘』を孕ませたから。
──無理矢理だったのか、合意の上なのか?
どちらかによっても違うだろう。
本家に行き、相手に直接話を聞くべきだと思った。
阿貴は兄、和宏を盾にしたとあの男は言っていたのだ。そこまでして阿貴が逃げたかったのだとすると、良好な関係だったとは言えないのではないだろうか?
──人づてに聞いただけではわからないことが多すぎる。
調べてみる価値はあるだろう。
阿貴の問題が解決すれば、兄が逃げ回る必要もなくなるのだから。
「兄さん。必ず俺が救ってあげるから」
優人は呟くように言うと、その髪を撫でたのだった。
よく慣らしたおかげか、吸い込まれるように中へ。
「んん……ッ」
腕で口を覆い、ぎゅっと瞳を閉じる兄。
最奥まで穿つ頃には、目に涙を浮かべていた。
「痛いの?」
優人の言葉に首を横に振る彼。
本来入れるところではないところへ挿れているのだから、苦しいのだろう。それも、きっと初めのうちだけ。
世の中にはいろんな人がいる。
身体の繋がりを快楽と感じ、誰とでも性交を行えるものもいればそうでない人もいるだろう。
少なくとも、自分と兄は好きでもない人と身体を重ねたいとは思っていない。それでも不安にはなる。
この行為は間違いではないだろうか?
兄は望んでいるのだろうか?
「優人……ッ」
腰を引けば、切なげに彼が優人の名を呼ぶ。
ここに居るよと言うように、その身体を抱きしめる。
全てを打ち消すように快楽を求めても、罪悪感は残るのだ。
──欲しがってよ。
不安をかき消すくらい。
阿貴も触れたであろう肌。
滑らかで吸い付くようなその肌を撫でる。
この心を嫉妬が付きまとうのは、無力だったからだ。
自分の前から兄が姿を消しても、追うことすら叶わなかった自分。逢いたいと強く懇願すれば、違う道が開けたかもしれないのに現実から目を背けた。
自分は諦めたのだ。
だからこんなにも後悔している。
諦めなければ、兄をもっと早く阿貴の手から奪い返せたかもしれないのに。
今の自分にできることなどたかが知れている。自分の腕の中で善がる兄が、この行為にせめて嫌悪を感じないように祈るだけ。
部屋に優しい音楽が流れる。
愛を紡ぐように穏やかに。
「ああ……ッ」
何度も腰を引いては進める優人にしっかりとしがみつきながら、甘い声を漏らす兄。その繋がった場所からは厭らしい音を立てながら。
「好き……」
「俺も好きだよ」
彼の想いに応えながら、自分自身と戦う。
阿貴に会おうと思った。
会って決別しなければならない。この嫉妬と。
兄の首筋に吸い付き、髪を撫でる。
溺れてしまいたい。どこまでも。
「はあッ……」
浅く息をする兄。二人の間に存在する彼自身が感じていることを示していた。
「気持ちいい?」
「ん……」
答える代わりに、上気して潤んだ瞳がこちらを見つめる。
「俺も」
同意をしたつもりなのに、彼はさらに顔を赤らめて奥をキュッと締め付けた。
「そんなに締め付けないでよ。
と優人がクスリと笑うと、”意地悪”と恨み言を言われてしまった。
──意地悪って……。
可愛いなあと思いながら彼自身に指を絡めつつ、その唇に口づける。
「ねえ。一緒に
優人が兄にそう告げると、彼はゆっくりと瞬きをしたのだった。
「さて……」
何度も
優人はその身体を優しく拭い、ベッドに再び腰かける。
問題は、どのようにして阿貴に会うかだ。あの男の連絡先は知っている。自分と手を組みたいと言った、社長の連絡先は。
ただ、彼が何を考えているのかいまいちわからない。
そもそも阿貴がどのようにしてあの男と愛人関係になったのかすらわからない。あの男は阿貴を愛人だと断言し、執着しているようには見える。
阿貴が養子になったのは『母の兄の娘』を孕ませたから。
──無理矢理だったのか、合意の上なのか?
どちらかによっても違うだろう。
本家に行き、相手に直接話を聞くべきだと思った。
阿貴は兄、和宏を盾にしたとあの男は言っていたのだ。そこまでして阿貴が逃げたかったのだとすると、良好な関係だったとは言えないのではないだろうか?
──人づてに聞いただけではわからないことが多すぎる。
調べてみる価値はあるだろう。
阿貴の問題が解決すれば、兄が逃げ回る必要もなくなるのだから。
「兄さん。必ず俺が救ってあげるから」
優人は呟くように言うと、その髪を撫でたのだった。
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