2 変わりゆく想い【R】
文字数 1,573文字
「はあッ……んんッ」
卑猥な音を響かせながら、和宏は感じるままに声を漏らす。
それが優人を煽っているとも気づかずに。
「たまんない。気持ちいいの?」
問えばコクコクと頷く、兄。
彼の中に何度も穿ちながら、その体温を感じれば心が温まる。
「俺のがそんなにいいの?」
全てを独り占めして、その愛を感じていたいと願った。
「ちが……優人が良いの」
行為だけを求めているわけじゃない。
好きだから繋がりたいのだと伝えたい兄のその背中をぎゅっと抱きしめる。自分がどれほどまでに愛に飢えていたのか、訴えかけるように。
首に巻かれていたその腕。
彼の手は優人の後頭部を撫でる。愛しいというように。
自分を満たしてくれるのは、やはり兄だけなのだと思った。この先訪れるだろう一族内での争い。
きっと兄を巻き込んでしまうだろう。
正直伯父がどんな人なのか記憶になかった。容姿くらいは覚えているが。
何の問題もない、穏やかな家庭が世の中にどれくらいあるだろう。
小さな問題を乗り越えてどの家庭もやっているはずなのだ。例え妾の子であろうが、産まれてきた命に罪はない。
自分たちはそう思ったから阿貴を受け入れたのだ。
それが後悔だけ残したなどとは思いたくはない。
罪は伯父にある。
無責任なことをし、阿貴をあんな風にした罪が。
自分から兄を奪った阿貴は憎い。
しかしそうなった根源が伯父にあるなら、憎むべきは伯父だ。その罪は重い。兄を傷つけ、苦しめたその罪は。
「優人……ッ」
切なげに名を呼ぶ兄に口づける。深く深く。
舌を絡め、魂が溶け合うかのように。
「愛しているよ、兄さん」
「俺も」
──もう、何処へも行かせはしない。
この腕の中で、俺だけ見ていればいい。
彼自身に指を絡め上下すれば、兄はあっけなく熱を放った。
優人はその鈴口から愛液が迸るのを眺めながら、なんと愛しいのだろうと思っていたのだった。
遠江と言う男は、兄の意思を感じながらもその欲望に従わなかった。
そこに愛を感じなかったからだろう。
阿貴を愛人とは言っているが、身体の関係があるようには思えない。ならば彼が阿貴に協力する本当の狙いはなんなのだろうか?
優人は冷蔵庫の前で、そんなことを思った。
彼に協力するのは、約束だったから。
しかし今は、同じ敵がいるからだという考えに変わりつつある。
恐らく阿貴のことを調べれば、沸き起こるのは憎しみだけではないに違いない。
冷蔵庫の扉を開けると、水の入ったペットボトルを取り出した。
平田と言う友人はとても几帳面で綺麗好きだ。ライフスタイルも趣向もとても合うので一緒にいて楽。ルームシェアをして助かっていることはたくさんある。
優人は貯蔵庫となっている扉を開けると、一本取り出した代わりに冷えていないボトルを冷蔵庫に入れた。
思いやり。それは一緒に暮らすための暗黙のルール。
自室に戻ると、ベッドに半身を起こしている兄にペットボトルを手渡す。キャップを開けて。
「ありがとう。それと、ごめん」
「なんで謝るの?」
優人はベッドに腰かけると、手の中でキャップを転がす。
あれから二度、三度兄を達 かせた。体力的なことなら問題はないが、ちゃんと食事をとらないと後で平田に怒られる。問題はそれだけだ。
「だって……あんな」
「俺もしたかったし、謝らないでよ」
兄、和宏の手が優人の背中に触れる。
まだ熱を持ったその手に、安らぎを感じながら自分の意思で物事を決めない自分にいら立ちを覚えた。
せめて兄に意思確認はすべきだったと。
平田はいつだって正しい。
けれど、万民に適応するとは限らない。
それなのに、嫌われるのが怖くて鵜呑みにし、兄を不安にさせた。助言を受けても、それをどう実行するのかは自己責任。
もちろん平田のせいなどとは思っていない。
──俺は、兄さんが好きすぎるんだ……。
卑猥な音を響かせながら、和宏は感じるままに声を漏らす。
それが優人を煽っているとも気づかずに。
「たまんない。気持ちいいの?」
問えばコクコクと頷く、兄。
彼の中に何度も穿ちながら、その体温を感じれば心が温まる。
「俺のがそんなにいいの?」
全てを独り占めして、その愛を感じていたいと願った。
「ちが……優人が良いの」
行為だけを求めているわけじゃない。
好きだから繋がりたいのだと伝えたい兄のその背中をぎゅっと抱きしめる。自分がどれほどまでに愛に飢えていたのか、訴えかけるように。
首に巻かれていたその腕。
彼の手は優人の後頭部を撫でる。愛しいというように。
自分を満たしてくれるのは、やはり兄だけなのだと思った。この先訪れるだろう一族内での争い。
きっと兄を巻き込んでしまうだろう。
正直伯父がどんな人なのか記憶になかった。容姿くらいは覚えているが。
何の問題もない、穏やかな家庭が世の中にどれくらいあるだろう。
小さな問題を乗り越えてどの家庭もやっているはずなのだ。例え妾の子であろうが、産まれてきた命に罪はない。
自分たちはそう思ったから阿貴を受け入れたのだ。
それが後悔だけ残したなどとは思いたくはない。
罪は伯父にある。
無責任なことをし、阿貴をあんな風にした罪が。
自分から兄を奪った阿貴は憎い。
しかしそうなった根源が伯父にあるなら、憎むべきは伯父だ。その罪は重い。兄を傷つけ、苦しめたその罪は。
「優人……ッ」
切なげに名を呼ぶ兄に口づける。深く深く。
舌を絡め、魂が溶け合うかのように。
「愛しているよ、兄さん」
「俺も」
──もう、何処へも行かせはしない。
この腕の中で、俺だけ見ていればいい。
彼自身に指を絡め上下すれば、兄はあっけなく熱を放った。
優人はその鈴口から愛液が迸るのを眺めながら、なんと愛しいのだろうと思っていたのだった。
遠江と言う男は、兄の意思を感じながらもその欲望に従わなかった。
そこに愛を感じなかったからだろう。
阿貴を愛人とは言っているが、身体の関係があるようには思えない。ならば彼が阿貴に協力する本当の狙いはなんなのだろうか?
優人は冷蔵庫の前で、そんなことを思った。
彼に協力するのは、約束だったから。
しかし今は、同じ敵がいるからだという考えに変わりつつある。
恐らく阿貴のことを調べれば、沸き起こるのは憎しみだけではないに違いない。
冷蔵庫の扉を開けると、水の入ったペットボトルを取り出した。
平田と言う友人はとても几帳面で綺麗好きだ。ライフスタイルも趣向もとても合うので一緒にいて楽。ルームシェアをして助かっていることはたくさんある。
優人は貯蔵庫となっている扉を開けると、一本取り出した代わりに冷えていないボトルを冷蔵庫に入れた。
思いやり。それは一緒に暮らすための暗黙のルール。
自室に戻ると、ベッドに半身を起こしている兄にペットボトルを手渡す。キャップを開けて。
「ありがとう。それと、ごめん」
「なんで謝るの?」
優人はベッドに腰かけると、手の中でキャップを転がす。
あれから二度、三度兄を
「だって……あんな」
「俺もしたかったし、謝らないでよ」
兄、和宏の手が優人の背中に触れる。
まだ熱を持ったその手に、安らぎを感じながら自分の意思で物事を決めない自分にいら立ちを覚えた。
せめて兄に意思確認はすべきだったと。
平田はいつだって正しい。
けれど、万民に適応するとは限らない。
それなのに、嫌われるのが怖くて鵜呑みにし、兄を不安にさせた。助言を受けても、それをどう実行するのかは自己責任。
もちろん平田のせいなどとは思っていない。
──俺は、兄さんが好きすぎるんだ……。
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