5 想定外の出来事
文字数 1,571文字
阿貴が遠江との暮らしに慣れてきた頃、本家に動きがあった。
阿貴はその頃、遠江の元で秘書の仕事を請け負っていたが、慌てて社長室に飛び込んでくる第一秘書を見て、何事かと顔を上げる。
秘書が遠江に何かを耳打ちしているのが見えた。
阿貴は奥の部屋で作業をするのが通例だ。
秘書といっても堂々とできない。いろいろと事情があるのは仕方のないことだ。その耳打ちの内容が自分に関係するものであっても、そんな状況な為直接耳にすることが出来なかった。
秘書が部屋から出ていくと、社長室のデスクに座っていた遠江が阿貴のとこへ足早にやってくる。
「阿貴、良くない知らせだ」
父に対しての復讐は、計画性を持って行うべきだと話はついた。
準備は鈍足ではあるが、軌道に乗っている。その妨げになるようなことなのだろうかと、阿貴は遠江を見上げた。
「君のお義姉さんが結婚するようだ」
「は?」
にわかには信じがたい。
義姉は阿貴が連れ出してくれるのを信じて待つと言ったのだ。
それを反故にしたというのだろうか?
義姉に好いた相手でも出来て結婚するというのなら、反対はしない。
むしろ祝福すべきだと思った。
だが、彼女はもう子が産めないのだ。それを理解した上での婚姻なのだろうか。
──相手が女性ということも考えられるけれど。
嫌な予感しかしない。
「君の父の意向らしい」
「……やっぱり」
義姉を厄介払いでもする気なのだろうか。
それなら自分に押し付けたらいい話だ。
阿貴はそんなことを思いながら、次の言葉を待つ。
「相手は二十も上で、今回の結婚は再婚らしい」
子がいるからもう、子が産めずとも良いという意味なのだろうか。それとも慰み者にでもするつもりか?
沸々と湧いて来る怒りを何とか理性で抑え込み、遠江の判断を待つ。
ここは部外者に冷静に判断してもらう方が良いだろう。
「一族の女性陣は反対しているらしい。特に怒りを露にしているのは君の義理の母。和宏の母だ」
和宏の母、優麻は恋愛結婚にて現在の夫と婚姻し、三人の子供を宿した。
今回の婚姻に賛成するわけがないのだ。
「君の父は強硬手段に出る準備をしているようだが、そうなると一族からの破門は免れないだろう」
遠江の目測は間違っていないと思った。
雛本一族は女系が多い。
本家の家長は曾祖父。つまり男性だが、本家に残るのは女性ばかりだ。
雛本一族の本家では多数の世帯が暮らしているが、男は早く独り立ちをしろと言われる家なのだ。その結果、女性陣が婿を取る形で一族を繁栄させてきた。
女性陣が強い本家は、なおのことこのことを許しはしないだろう。
阿貴が忌み嫌われていたのも、男児だったからという理由で片付けられることは多い。
「連れ出すなら、今だと思う」
と遠江。
今なら反対派が援護をしてくれる可能性が高い。
「だがどうやって?」
自分と遠江だけで本家に向かったところで追い返されるのが関の山だろう。じっと遠江の返事を待っていた阿貴。
だが遠江には考えがあるようだ。
「優人くんに力を貸してもらおうと思う」
「え?」
女性陣のほとんどは、本家分家問わず今回の婚姻に反対をしている。
その中でも和宏の母は阿貴の父の妹。
近しい関係な上に、立場も優位なのだと思われる。
現に、彼女の声掛けにより分家の者も本家に出張っている状況だと報告を受けたのだという。
「だが俺は嫌われているんだぞ? そんな簡単に優人が協力してくれるとは思えないんだが……」
すると彼がため息をついた。
分かってないなとでも言うように。
「優人くんは協力してくれるはずだ。彼の望みは和宏に君を近づけないことだから」
「それとこれがどう繋がるんだよ」
と問えば、
「阿貴にとって大切な人なお義姉さんだと分かれば彼だって安心するだろう?」
と遠江。
他hシカにそれは一理あるなと阿貴は思ったのだった。
阿貴はその頃、遠江の元で秘書の仕事を請け負っていたが、慌てて社長室に飛び込んでくる第一秘書を見て、何事かと顔を上げる。
秘書が遠江に何かを耳打ちしているのが見えた。
阿貴は奥の部屋で作業をするのが通例だ。
秘書といっても堂々とできない。いろいろと事情があるのは仕方のないことだ。その耳打ちの内容が自分に関係するものであっても、そんな状況な為直接耳にすることが出来なかった。
秘書が部屋から出ていくと、社長室のデスクに座っていた遠江が阿貴のとこへ足早にやってくる。
「阿貴、良くない知らせだ」
父に対しての復讐は、計画性を持って行うべきだと話はついた。
準備は鈍足ではあるが、軌道に乗っている。その妨げになるようなことなのだろうかと、阿貴は遠江を見上げた。
「君のお義姉さんが結婚するようだ」
「は?」
にわかには信じがたい。
義姉は阿貴が連れ出してくれるのを信じて待つと言ったのだ。
それを反故にしたというのだろうか?
義姉に好いた相手でも出来て結婚するというのなら、反対はしない。
むしろ祝福すべきだと思った。
だが、彼女はもう子が産めないのだ。それを理解した上での婚姻なのだろうか。
──相手が女性ということも考えられるけれど。
嫌な予感しかしない。
「君の父の意向らしい」
「……やっぱり」
義姉を厄介払いでもする気なのだろうか。
それなら自分に押し付けたらいい話だ。
阿貴はそんなことを思いながら、次の言葉を待つ。
「相手は二十も上で、今回の結婚は再婚らしい」
子がいるからもう、子が産めずとも良いという意味なのだろうか。それとも慰み者にでもするつもりか?
沸々と湧いて来る怒りを何とか理性で抑え込み、遠江の判断を待つ。
ここは部外者に冷静に判断してもらう方が良いだろう。
「一族の女性陣は反対しているらしい。特に怒りを露にしているのは君の義理の母。和宏の母だ」
和宏の母、優麻は恋愛結婚にて現在の夫と婚姻し、三人の子供を宿した。
今回の婚姻に賛成するわけがないのだ。
「君の父は強硬手段に出る準備をしているようだが、そうなると一族からの破門は免れないだろう」
遠江の目測は間違っていないと思った。
雛本一族は女系が多い。
本家の家長は曾祖父。つまり男性だが、本家に残るのは女性ばかりだ。
雛本一族の本家では多数の世帯が暮らしているが、男は早く独り立ちをしろと言われる家なのだ。その結果、女性陣が婿を取る形で一族を繁栄させてきた。
女性陣が強い本家は、なおのことこのことを許しはしないだろう。
阿貴が忌み嫌われていたのも、男児だったからという理由で片付けられることは多い。
「連れ出すなら、今だと思う」
と遠江。
今なら反対派が援護をしてくれる可能性が高い。
「だがどうやって?」
自分と遠江だけで本家に向かったところで追い返されるのが関の山だろう。じっと遠江の返事を待っていた阿貴。
だが遠江には考えがあるようだ。
「優人くんに力を貸してもらおうと思う」
「え?」
女性陣のほとんどは、本家分家問わず今回の婚姻に反対をしている。
その中でも和宏の母は阿貴の父の妹。
近しい関係な上に、立場も優位なのだと思われる。
現に、彼女の声掛けにより分家の者も本家に出張っている状況だと報告を受けたのだという。
「だが俺は嫌われているんだぞ? そんな簡単に優人が協力してくれるとは思えないんだが……」
すると彼がため息をついた。
分かってないなとでも言うように。
「優人くんは協力してくれるはずだ。彼の望みは和宏に君を近づけないことだから」
「それとこれがどう繋がるんだよ」
と問えば、
「阿貴にとって大切な人なお義姉さんだと分かれば彼だって安心するだろう?」
と遠江。
他hシカにそれは一理あるなと阿貴は思ったのだった。
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