3 気が振れるほどに【R】

文字数 1,590文字

「先っちょが入ればなんとかなるから、力抜いていて」
 優人はそんなことを言う。
「したこと、あるのかよ」
 涙目で睨みつける和宏に彼が呆れたようにため息をつき、
「ない」
と答える。

「よく聞いて、兄さん」
 少し怒った表情。
 和宏はほっとしたと同時に、びくりと肩を揺らす。
 和宏の心臓あたりに指を突き立てると、
「確かに俺には彼女はいた。でも、無責任なことはしない」

──簡単につきあうくせに。
 
 知ってるんだぞと言うようにじっと優人をにらみつけていると、
「ヤキモチは嬉しい。けど、そんな顔しないでよ」
と言って和宏にキスを落とす。
 優しくて甘いキス。
「キスだって初めなのに」
と彼。
 その言葉に和宏の体温は上がる。ドキリとした。
 意外過ぎて、
「え? ……そうなの?」
と思わず問う。

「俺をなんだと思ってるんだよ」
 まあいいけどと言って、彼は和宏の内腿(うちもも)を撫でた。
「だって、上手いし」
と和宏が恨み言を言うと、
「はあ?」
 誰と比べてんの? と呟いて、彼は和宏の両股(りょうもも)を大きく開く。
「もう、誰とも比べないように俺でいっぱいにしてあげるから」
「あッ……」
 ピトっと蕾に彼自身があてがわれたのが分かり、更に心拍数があがっていく。

「よく慣らしたから痛くないと思うけれど」
と、ぐいっと彼が腰を進めた。
「ああ……ッ」
 蕾が彼自身によって押し開かれていく。
「やあ……ッ……優人っ」
「ダメ、()めない」
 彼は和宏の両股を押さえ、抵抗を封じた。
「そんな顔して、いやじゃないでしょ?」

 自分がどんな顔をしているのか分からないが、こちらを見る優人が興奮しているのはわかる。

「凄く、ヤラシイ顔してる。そんなに煽っておいて、今更ダメとか言わないでよ」
「はあ……ッ」
「ほら、兄さんの先っちょもこんなに濡れて」
 彼が和宏自身を握込み、じっと鈴口を見つめる。
 頭がおかしくなりそうだ。

──『鉄壁の理性』……か。

「ほら、全部入った」
 彼は身を捩る和宏を抑えつけ、深く腰を押し進めるとそう言って満足気に微笑む。
「中びくびくしてるの、分かる? 俺のこと締め付けてる。気持ちよくてたまらないんでしょう?」
 彼の手は和宏自身を握り込み上下していたが、
「可愛い。イキきたいんでしょ?」
と和宏の睾丸を優しく撫でまわす。

「優人」
「うん?」
 意地悪気にこちらを見下ろす端正な顔立ち。
「優人はその……自慰とかすんの?」
 和宏の問いに彼が驚いた顔をした。
 そして、
「するように見える?」
と逆に問われる。
 
 彼は和宏に覆いかぶさると、首筋に唇を寄せながらゆっくりと腰を引いていく。
「あ……あああッ」
 気持ち良すぎてどうにかなってしまいそうだ。
「凄い締め付け。食べられちゃそう」
 冗談を言う優人は余裕そうにみえてくやしい。
「好きだ」
「うん。俺も好きだよ、兄さん」

──俺で感じて。
 気が変になりそうなくらい求められたい。

「んッ……すきっ」
 彼が腰を引くたび、快感の波が押し寄せる。
()っていいよ。何度でも」
「ああッ」


 何度も()かされベッドでぐったりしていると、キッチンへ飲み物を取りに行っていた優人が戻ってきて傍らに腰かけた。
 軋むベッド。
 和宏は思わず彼の腰に腕を伸ばす。
「どうしたの? ここに居るよ」
と彼。
「俺の中、良かった?」
 こんなことを聞いてしまうのは、彼にとって自分が特別でありたいからだ。
「うん、凄く」
と優人。
 それだけで心が満たされていくような気がした。
 だが何も問題は解決していないのだ。それが現実。

「これからどうしよっか」
と彼。
「阿貴のことはあの人に任せて大丈夫だと思うけれど。しばらくここで俺たちと暮らす?」

 そうだ。あの彼がどう動くか分かっていない。
 阿貴のところへ戻れば今までと何ら変わりはなくなってしまう。
 少し様子を見るべきだと優人も言う。

「そうだね。そうさせてもらうよ。それに……」
 優人の傍に居たいといえば、彼は優しく微笑んだのだった。
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