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文字数 1,146文字

 ソロは空中ディスプレイに思わず手で触れた。

「ああ・・・・・・ゲームやりたい・・・・・・」

「地上の生物は娯楽が減って大変だな」

「捕食者が通信網めっちゃ攻撃すっからさぁ」

「あいつら性格悪いからな」

 白山羊は地上の生物に同情は寄せるものの、完全に他人事だ。

 地上の通信インフラは戦時中から捕食者の攻撃対象となっており、平和になってからもそれは変わらず続いている。

 ニュースによると、穏健派の捕食者たちとは話がついているはずなのだが、習性はそうそう変えられないとの返答が政府に来ているらしい。

 キャピタルもソロの隣で画面に手を伸ばした。

「おれもクロスジヒトリのコレマータを検索してぇわ」

「なんだそれ。呪文か」

「ふふん」

 キャピタルは意味ありげに笑みを浮かべるだけで、ソロの質問には答えなかった。

「通信インフラが回復したら、オレにも見せろよ。検索ワードが長すぎて覚えらんねぇから」

 白山羊のアカウントで動いているから当然なのだが、空中ディスプレイは反応しない。映像を触っても、すり抜けるばかり。

「浮島には遮るものが無いから、衛星通信が使えるのだ」

「羨ましいぜ。キャピタル、山羊から翻訳デバイス貰ったんだって? 」

「おう。でも、『メェ~』とか『ウエッ』しか言わないから、あんまし役に立ってなかった」

「そっか。こういう時はやっぱきのこ同士がいいんだな」

「タヌキは山羊共に『お前自分のことカワイイと思ってんだろ』って連れて行かれたぜ。翻訳デバイスにそう出てきた。」

「ばっ、バカヤロー! なに呑気に見送ってんだ、思いっきりボコされるフラグじゃねぇか! 」

「知らねーよ」

「オレらも行くぞ、たぬキノコがいじめられるっ」

「なんだエラそうに! 一番遅く起きたクセに! 」

 イヤフォンから勇ましく『ワシントンポスト』が流れて来る。

 勢いに乗ってソロはノウゼンカズラの壁に手を突っ込んだ。昨晩と違って木質化してしまい、なかなかこじ開けられない。

「二人とも、安心しろ。タヌキはタヌキ部分がお腹を空かせていたから、仲間にお乳を分けてもらいに連れて行かれたのだ」

「お前らの翻訳デバイス正常に機能してねーぞ」

「なあ、ソロ。山羊何て言ってんの? 」

「安心しろ、だって」

「ホントにそれだけ? 」

「そうだ」

「その翻訳デバイスは物置小屋から掘り返してきた旧式だからな。なんせ、用がある者はたいてい通訳を連れて来る。さて、私は腹がくちくなった。お坊ちゃん方、私に付いて来るとイイ」

 白山羊はソロが手を突っ込んで開けた穴に頭を突っ込むと、小さな角をフリフリ、(つる)を蹴散らし、無理やり外へ出た。

 白山羊が空けた穴からソロとキャピタルも続く。――が、

「ソロ、待て」
「なんだよ」
「出られない」
 キャピタルがケツでつっかえて出られなくなってしまった。
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