p58食害

文字数 566文字

「まあいい。お前んとこの親水緑道、どう考えても捕食者の食害だよな」

 ガラテアとガワのキスシーンがガッツリ記憶に刻まれて話が入ってこない。

 ソロは自分の唇に再び無意識に指を伸ばしていることに気が付いて、慌てて手を引っ込めた。

 この話題は切り上げて、ソロは別の話題をキャピタルに振った。

「なあ、キャピタル。お前昨日、ツル太郎の姿見たか? 」

「教室中、(つる)だらけだったんだから見たに決まってんだろ。気持ち悪い」

 どうやら人間の姿の状態は見ていないようだ。

 もしも見ていたら、きっとすぐにツル太郎と林田が同じ顔をしていたことに気が付くだろう。

「あっ、そうだ。キャピタル、オレに名前聞いて」

「なんだよ急に」

「いいから聞けって」

「名乗れ」

「これは夜だけ香る松本ソロというきのこで・・・・・・」

「大丈夫か? じいさんとお袋がいきなり消えて動揺してんじゃないのかっ? 」

「最後まで聞けっ。ちょっと、今度はオレのフルネーム言って」

「そんな状態で無理して学校くんなよ。今日はサボってうち行こうぜ。姉ちゃん仕事休みだから、なんか作ってもらおう」

「いやいや、ここからが大事だからオレの名前を言えって」

「松本ソロ」

「オレもそう呼ばれている」

「もう行くぞ」

 ソロは荷物のようにキャピタルの肩に(かつ)がれて、柴田家へ連行されてしまった。思い通りに事が進まなくて悲しい。
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