p111 楽しい撮影会①

文字数 1,010文字

 だが、その瞬間、黒い根状菌糸束から急に力が抜けた。
 
 キャピタルはバランスを崩して顔面から倒れ、当然ソロはその下敷きとなり、更に勢い余ったブルーセルに上から踏んづけられた。

 ブルーセルはキャピタルとソロを踏みつけると向きを変え、森に向かって(ひづめ)を鳴らして暴れ出した。

 起き上がったソロとキャピタルが周囲を見回すと、木々の間から、黒い影が見えた。

 黒い根状菌糸足も、森へ向かって引いて行く。

「な、なんだ、ありゃあ? 」

 暗闇に目を凝らすと、なにやら無数の黒い影がうねっているように見える。

「暗くてよく見えない」

 ソロが言うが早いか、後頭部のノウゼンカズラが突如、周囲に向かって(つる)を伸ばし始めた。

 それに合わせるかのようにブルーセルが(ひづめ)を鳴らして駆け巡ると、ノウゼンカズラの(つる)が燃えだした。

 火に驚いて、たぬキノコ一族が物陰へ逃げ込むのが見えて可愛くて癒された。

「うわぁ・・・・・・みんな好きだ。選べねえよ」

「お前なに言ってんだ頭大丈夫か。花咲いてるし」

 パンプアップして鋼鉄と化したキャピタルのナイスバルクに、ソロは腹パンを繰り出した。

 だが、硬すぎて自分の手を痛めた。

 そのキャピタルは破けて体に張り付いたピチTを満足げに眺めて頷いている。
 ソロに腹パンされたことすら気が付いて無い。

 その様子にソロは呆れつつ、しかし、祝ってやりたいとも思った。

「良かったな、たまにはオレが写真撮ってやんよ。カメラ持ってるか?」

「おっ、マジか。頼むわ」

 白山羊から貰った翻訳デバイスにカメラ機能が付いている。

 キャピタルから翻訳デバイスを受け取ると、ソロは破れたピチTがよく見えるように写真を撮ってやった。

 頭の上の方がフレームアウトして、脳みそが無いヤツみたいになってしまった。

「カッコ良く撮ったか」

「バッチリだぜ」

 ばっちりデコから上がフレームアウトした写真が撮れた。

「バカ野郎っ! 撮り直せっ」

「贅沢言うな」

 ノウゼンカズラに火の手が行き渡ると、周辺が明るくなり、黒い影の正体が明らかになった。

「なんだ、あの骨は」

 大小様々な無数の骨と黒い根状菌糸束に覆われた巨大な木が、ソロとキャピタルが見上げる先にいた。
 
 その木から、ハラハラと小さなものが散っている。地面に落ちたものをソロが確認すると、銀杏の葉だった。

「キャピタル。あれ、銀杏だ」

「あの骨はなんだ? 人間の頭とか、動物の骨が見えるけど」

「ガワじゃなさそうだけど、グロいな」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み