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文字数 857文字

返事の代わりに、キャピタルの尻から爆音で屁が放たれた。

「バカヤローっ! オレがせっかく頑張って良い話してんのに、なんでこのタイミングで放つんだよ! 」

「ははっ、ごめぇーん」

 反省の色が見られない者の言動である。当然ソロはお(かんむり)だ。

「責任取って全部吸え! 毛穴に入るっ! 」

「テメー、おれの屁を何だと思ってんだ! 」

 窓を開けて換気しながら、結局二人で涙が出るくらい笑い倒してしまった。

 食ってる量が凄まじいから臭気もお察しである。

 生物兵器として世に売り出して恥ずかしくない威力。

「相撲がダメでも軍隊行けばいいだろ。バンクより出世して、こき使ってやれよ」

「おれもそう思ったんだけど、兄ちゃんに大反対されたんだわ。何でか知らねーけど」

 身内を危険に晒すのは気が咎めるのだろう。

 話が通じなくて黙らない軍人だが、人並みの感情がバンクにも備わっているようで安心した。

「キャピタル、プるトタキすィ―テスの燃え跡でも見に行こうぜ。ここに残っていたら相撲の稽古が始まる」

「そうだな、弁当でも持って野次馬しに行くか」

「たぬキノコも誘ってこーぜ。昨日の夜、校長に行ってこいって言われたんだってさ」

「おれ、ちょっと米の精米行ってくるわ」

「今から? 」

 米の精米に出かけようとするキャピタルを「弁当はもう持ってるだろ」と説得し、ひとまず鞄に教科書も詰めさせた。

 家に帰ってきたことを幸いに、キャピタルは朝作ってもらった弁当を今食おうとしていた。

「教科書重ぉい」

「我慢しろ」

 ソロは浮島クエストが終わるまで、キャピタルに教科書を持ってこさせるために一緒に登校することにした。

 万が一のこともある。

 正攻法で進級するに越したことはない。

「はっけよい・・・・・・」

 キャピタルがダラダラ教科書を詰めている間、ソロはファンドに小声で話しかけられた。

 バックグラウンドでキャピタルから例の鼻歌が流れて来るので、あやうく合いの手を入れる寸前だった。

「のこらない」

 相撲を取っても良い気分の時は「のこった」でがぶり寄るが、今日はそんな気分ではない。
 
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