p8 柴田キャピタル

文字数 1,327文字

 すると、校門の前で明らかにサイズが小さい半袖のピッチピチのTシャツに黒のハーフパンツ姿の生徒が生活指導の教師に捕まっていた。

 
 大柄でゴリゴリの筋肉質な体格なのだが、リボンがモチーフのカチューシャで髪をオールバックにしているところが、ちょっと抜けてる感じがして威圧感を薄れさせている。

「あの子、ソロよりも大きいねえ」

「オレ、たぬキノコよりはデカいけど160無いからな。大概の男はオレよりデカいと思うぜ。先生に怒られてる奴は170くらいありそうだし」

「ずいぶん怒られてるよ」

「あいつ、柴田キャピタルっていうんだ。オレの友達なんだけど・・・」

「馴染めないとか言ってたくせに、友達はいるんだね」

「アイツも集団に馴染めない系だから。類友ってやつだ」

 聞こえてくる説教の内容からするに、どうも学校に弁当しか持ってこなかったことを咎められているようだ。

 うまくやらないと学校に入れてもらえないだろうが、バナナを食べながら説教を受けている時点で今日もアウトだろう。

「せめて鞄に弁当いれて持ってくりゃいいのに。なんでむき出しで持って来るかな」

「そういうキミはむき出しでタヌキなんか学校に抱っこして来ていいと思ってんの」

「そうなんだよな。どうしよっかな」

「とりあえず、学校の人に事情を説明するよ。ソロから言ったら、怒られちゃうかもしれないから、ここの一番偉い人に会えないかな。謁見を申し出てよ」

「謁見て。国王じゃあるまいし。オレ、いい考え思いついたから、もう喋るなよ」

 生活指導の教師は丁度こちらに背を向けてキャピタルにお小言を食らわしている。ソロがヨッと手を上げると、キャピタルはすぐに気付いて、バナナを頬張りながら不敵な笑みを浮かべた。

「食ってる場合じゃねーだろ」

 ソロはキャピタルと目が合うなり鼻で笑うと、思い切り変顔を仕掛けた。

 キャピタルは口の中のバナナが鼻から少し出たが、なんとか耐えた。

 キャピタルは目の前で教師に説教されているにも関わらず、ふざけた顔で捨て身の反撃してきた。

 鼻から飛び出した薄汚いバナナがツボにはまり、ソロは敗北した。
 
 勝者のキャピタルは説教されている分際でふざけた顔をしたため、更に怒られることとなった。
 
 その後ろで笑っていたソロもついでに怒られることとなった。
 
 たぬキノコを抱っこして登校してきたことも咎められた。

「先生ぇ、これちょっとでけぇキーホルダーなんで通して」

 即看破されてしまうウソでソロが乗り切ろうとしたことに、たぬキノコは深く失望した。


「キーホルダーがこんなに獣臭(けものくさ)いわけないでしょう」

獣臭(じゅうしゅう)はオレの香りなんで通してもらいます。先生はキャピタル君の説教を続けてください。」

「続けてください、じゃねーわ。負けきのこめっ」

 キャピタルにバナナの皮を投げつけられて、ソロも思い切りグーで腹パンした。

 だが、丸太みたいな固さで逆に手を痛めてしまった。

 キャピタルも鼻から出たバナナを飛ばして応戦する。

小競(こぜ)り合いを今しない。それより松本さん、そのタヌキどうしたんです」

「ガリッガリでほっとけなくて。このキーホルダー」

「野生動物の保護は各自治体(かくじちたい)への届け出が必要なんですよ。弱っているなら、鳥獣保護(ちょうじゅうほご)センターへ連絡を入れないと」
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