p80 大恋愛の予感

文字数 1,016文字

「一人はアクリルスタンドだ」

「がほう?!

 あれだけ騒ぎが大きくなっているのに、相手がアクスタとは何事か。
 これは大変である。

「いや、ちょっと待て。一人ってどういうことだ」

芽胞(がほう)じゃねーよ、アクリルだって。失礼な」

「衝撃が大きくて全然関係ない単語を口走っただけだぜ。芽胞(がほう)なんて言って悪かった」

「それより、兄ちゃんから林田の情報だ」

 そんなことより『一人は』というのが気になる。
 まさか、複数キープしているのか。
 だがそれは後回しだ。

「なんだって」

「林田の居場所が分かった」

 ソロはキャピタルの女<林田にやっと比重が変わった。

 見つかったのなら話は別だ。

 他人の彼女より林田の方が大事だ。

 しかも自分に好意を寄せていたかもしれないのなら尚更である。
 

『記憶喪失』『天敵』『両想い』
 フラグは揃っている、一大事だ。
 少女漫画級の大恋愛の予感に、ソロの胸が期待で膨らむ。

「マジで? どこにいる? いつ会える?」

「たぶん軍に保護されてると思う。ソロを連れて市ヶ谷駐屯地(いちがやちゅうとんち)に来いって言ってたから」

「なんだよ、それを早く言えよ。隠れる必要なんか、無かったじゃないか」

「いや、隠れないとダメだ。おれが結婚させられる」

「なあ、『一人は』ってなんだよ。他のは何なの? 有機物なの? 無機物なの? 複数と同時進行で付き合ってるの? 」

「このままじゃ、おれはすべて失って、一人ぼっちで式場に立たされることになる」

「そん時はアクスタでも参列させとけよ」

 アクスタ以外のメンツが気になるが、そんなことより林田である。


 早く会いに行かないと。


 ソロは茂みから立ち上がると、バンクの姿を探した。

 二度と会いたくない奴だが、今だけは早く会いたい。

「待てよ、ソロ。おかしいだろ」

「なんで? 」

「何でソロなんだよ。林田は体がクソ弱かったんだぜ。普通は医者だろ」

「軍医がいるだろ、もう回復してるとか」

「本体から切り離されてるのに? 兄ちゃんがこの件を警察から引き継いだの昨日だぜ。昨日の今日で回復してるなんてありえないだろ。おれみたいに屈強な人間でもなければ、お前みたいに回復が早いきのこでもないのに」

 ソロは体育座りすると、キャピタルの話を整理した。

「そうだな、オレを呼ぶのはおかしい。この流れだと重要参考人になってるぽいな」

「ソロ・・・・・・」

「どうした。たぬキノコ」

「バンク少佐が近くまで来てる。大人しく投降して欲しいって呼びかけてるよ」

「ホントは何て言ってる? 」
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