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文字数 935文字

「兄ちゃんはBM菌を応用して他人の治療ができるんだけど、使いすぎると自分の菌の量が減るから、あんな感じでサイズが縮むらしい」

「だからって、急に縮みすぎだろ。なんかオラついてるし」

「兄ちゃん曰く、でっかい奴が普段からオラついてたら周りがビビるから大人しくしてるけど、逆に()っさいと周りがナメてかかって来るから気が強くなるんだってさ」

「ほう」

 ソロもチビでナメられやすいので、なんとなく気持ちはわかる。
「小さくなると体も軽くて快適で、あらゆるリミッターが外れたような開放感があるらしいぜ。()っさい時の兄ちゃんは『カーバンクル』って呼ばれてて、とにかく手が付けられねーらしいんだわ」

「かー、え? なんだって?」

()っさい兄ちゃん、おれもあんま得意じゃねぇんだ」

 そういえば、さっきから自分の兄貴の方をキャピタルは見ようともしない。
 視線を落としたまま、顔すら向けない。

「かー、なに? さっきのもう一回言って? 」

「ソロ、おれを(かつ)いで逃げてくれ」

「は? さっきまで『勝てなくても戦うのが人類だろ』とか『おれは、おれの強さを証明するために戦うんだよ』とかカッコイイこと言ってたじゃねーか」

「アレはアレ、ソレはソレ。ダメなもんはダメなんだよ。さっき(かつ)いで逃げてやったんだから今度はおれを(かつ)いで逃げてくれ」

「93キロ(かつ)いでダッシュできねーよ」

「お前だって『このスリルがたまんねーんだよ』とか言ってたくせに、いざとなったら腰砕(こしくだ)けじゃねーか」

「だめなもんはダメなんだよ。お前がダメならオレだってダメなんだよ」

「おんぶでも()っこでもいいから、早くおれをこの場から連れ出せっ」

「オレが93キロの大男を(かつ)げるわけねーだろ」

「じゃあ、兄ちゃんの頭はお前がモップの(かど)で殴ったことにしてくれ」

 (つる)の捕食者が扉に向かって(つる)を突っ込ませる前のことである。

 キャピタルは自分の兄貴の頭に、モップの(かど)を全力で振り下ろしているのである。

「はぁああああ? ばっ、ばっかじゃねーのぉおお? 」

「なんとか! かんとか! 〇〇△△■♨♨! 」

 耳に飛び込んできた爆音にやられ、床にのたうち回るソロをしり目に、柴田兄弟は再びの対面を果たした。

「デカくなったなぁ、リトル・マッスル」
「そっ、外でその呼び方すんじゃねー! 」
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