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文字数 1,089文字

「ばっ、バカヤロー! 出家(しゅっけ)ナメてんのか! 」

 こんな食欲旺盛なヤバい白山羊が納める浮島へ出家(しゅっけ)されたら、恐ろしくて会いに行けなくなってしまう。

 会う機会が無くなってしまったら、ただでさえ低い告白成功率がゼロを下回ってしまう。

「諦めんなよ、たぬキノコ! オレがお前の浮島のナラタケを退治しに行く! 」

 つい勢いで無茶なことを口走ってしまった。

 だが、ソロがナラタケ退治を宣言した途端、背後から地鳴りと地響きが近づいてきた。

 迫りくる音と振動にソロが振り向くと、目の前にブルーセルの顔面が迫っていた。 

 横長の瞳孔と目が合う。
 めっちゃ怖い。

 岩のようなゴツイ額で顔面を強打し、ソロは地面にのたうち回った。

 衝撃でイヤフォンがウォークマンから抜けて、大音量で『スタン・ハンセン~サンライズ~オーケストラ版』が流れる。

 しかし、白山羊の言った通り、ブルセールはそれ以上は自分の額をすり寄せて来ただけで、ソロに何も危害を加えなかった。

 ただし、勢いが強すぎてソロは床の上で悶絶することにはなったが。

「なんだソロ、どっか行くのか。置いて行くなよ」

 ソロの無謀な発言に気軽について行こうとするキャピタルにも、ブルーセルは突っ込んでいった。

 しかしキャピタルはソロのように無様に床に転がされることなく、がっつり受け止めた。

 確かに、額をすり寄せて来るだけでそれ以上危害を加えてこない。キャピタルは荒ぶるブルーセルをヘッドロックで抑え込み、なんとか動きを封じようと奮闘する。

「きゅ、急になんだよ、大山羊」

ソロはおでこを抑えながらブルーセルに向かって話しかけたが、返事が無い。

 キャピタルのヘッドロックから前足を振り回して脱出すると、床に転がっているソロをどつきまわし始めた。

「しっ白山羊、ブルーセルは何で喋らないんだ」

「きのこじゃないから。ブルーセルはまだ純粋な山羊だ。ちなみに、この牝山羊たちはきのこ化しているが彼の妻で、子ヤギたちはみんな彼の子供。私はもともと山羊に寄生したきのこだから、こうしてトロピカルなお坊ちゃんともブルーセルとも意思の疎通ができるのさ」

「この山羊モテるんか。羨ましい。ところで、オレをどつきまわすのやめさせてくれよ」

「いい音楽だからリピートかけろって」
 
 ソロは言われた通りリピートをかけた。

 キャピタルも気に入ったのか、ノリノリで東屋の支柱を鉄砲柱に見立て、ツッパリの練習を始めた。

 支柱でやるのはやめてほしい。

「三年前、純粋な山羊の屈強さを買われ、ブルーセルはタヌキの浮島の討伐隊に編成されてしまった・・・・・・」

 そして白山羊は遠い目をして、いきなり語り始めた。
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