p71

文字数 992文字

 放課後、ソロたちが都営新宿線の住吉駅から地上に出ると、落雷に遭ったプロトタキシーテスの一群がドンと視界に飛び込んできた。更に

「なんか時間の割に空が暗いと思ったら・・・・・・」

 地下鉄から出て来たばかりの三人の頭上に、浮島がいた。
 昨日まで江戸川区の上空にいた浮島である。
 珍しく、今日はかなり高度の低い場所に陣取っている。

「浮島もプロトタキシーテスを見に来たんじゃねーの。ちょうどあの一番デカいヤツのそばにいるし」

 キャピタルが指し示した方向を見ると、確かにひと際大きなプロトタキシーテスのてっぺん付近に浮島が接触していた。



 昨日の落雷で焦げたプロトタキシ―テスはいつのまにやらライトアップされており、駅からプロトタキシーテスの群生地までウェルカムな雰囲気で満ち満ちている。

「大きいねぇ、浮島もプロトタキシ―テスも。こんなに近くから見ることができて、僕はもう大満足だよ」

 たぬキノコが感嘆のため息をつくと、プロトタキシ―テスのものと思わしき胞子と灰が風に乗ってやってきた。

 ついでに燃えカスも地面を転がっている。

「たぬキノコ、一番デカい奴で300メートルあるらしいぜ」

 プロトタキシーテスの群生地に近づくにつれ見物客が増し、燃え跡がある公園の入り口まで長蛇の列ができていた。

 ソロたちの前に並んでいる見物客たちから、ひっきりなしに入場料の話が聞こえてくる。
「ねえ、入場料金2000円だって」
「高くない? 」
「プロトタキシーテス公園の整備代にするんだって」
「昼は1000円で夕方から2000円だってさ」

 どこかで規制線が張られているかと思いきや、入り口付近で入場料を取って客をかき入れているようだ。

 しかし、そこへたどり着くまでが遠い。

 列の最後尾でキャピタルはソロを肩車して、ソロはたぬきノコを頭に乗せて、見物客がどこまで続いているのか眺めた。

 ちなみに三人合わせて20円しか持っていない。

「ダメだ、先頭が見えないよ」

「キャピタル、降ろしてくれ。たぬキノコが先頭が見えないってさ」

「みんな考えることは同じなんだな」

 黒焦げになったプロトタキシーテスの一群の中に、一つだけ、かろうじて高くそびえ立つ健気な奴が残っている。アイツが噂の300メートルである。

 すっかり焦げているが、アイツだけがまだしっかりと直立しているように見える。

「ソロ、今日はどうする。あきらめるか」

「どうすっかな」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み