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文字数 1,120文字

「白山羊にヨロシクって言ってたぜ」

 白山羊はソロの目の前まで顔を近づけ、、今までよりも更に小さな声で囁いた。

「その存在は、誰にも知られてはいけない」

「なんで」

「まちゅもと、私からの最後の礼だ。本当に平和になるまで、その存在を口にしてはいけない」

 わかったような、わからないような。けれど、天敵のことは今後も周囲には黙っていた方が良いのかもしれない。

 なにより、軍人であるバンクから自分は『捕食者側』の生物だと思われている。

「頭のノウゼンカズラ、トロピカルだったのに残念だったな。無くなってしまって」

 後頭部に手をやると、もう(つる)は残っていなかった。

 自分の中に隠れていたリョウはいない。リョウが見ていた光景も、もう共有することはないのだろう。

 

 あんなに助けてもらったのに、カッコ悪いだのなんだのケチをつけて本当に悪かった。もっと大切にしなきゃいけなかったのに。


 胸に抑え込んでいる不安が、隙間からあふれ出す。
 あふれた不安が言葉となって、ソロの口から洩れた。

「会いたい」

 朝日に照らされて、たぬキノコ一族の神木銀杏に咲くノウゼンカズラが美しく咲き誇っている。ガラテアは朝日と共に花が閉じてしまい、芳しい芳香も消えてしまった。

 それでも、銀杏に絡みついた白い根が美しく、キラキラと輝いている。

「オレ、早く謝んなきゃいけないことがあるのに・・・・・・」

 自分がリョウにどれだけ大切に思われていたか。

 林田越しに宝物のように抱きしめられた感触が、悪夢の底で直に抱きしめられた腕の力強さが、まだ体に残っている。後半は絞め殺されるかもしれないと思ったが。

「まちゅもととパピタンの平穏を、我々は心から祈っている。さらばだ」

「キャピタル、白山羊とブルーセルはもう行くって」

 おでんを夢中になって胃に流し込んでいたキャピタルは立ち上がると、残しておいたアメリカンドッグの串に具を刺した。箸も串も無駄にしない。役に立つと知っていて取っておいたのだろうか。

 玉子と玉子と玉子と玉子の組み合わせを頬張りながら、ノソノソと白山羊とブルーセルのもとへやってきた。

「世話んなったな、ありがとよ。帰る前に相撲取ろうぜ」

「白山羊、キャピタルがブルーセルと相撲取りたいって」

「ブルーセルに近づくな」

「相撲はNGだって」

「なんだお高くとまりやがって。調子乗んなよ」

 キャピタルは玉子を頬張りながら悪態をついた。

「思い通りにならないからって、そういうの良くないからなっ」

 ソロも他人のことを言えたもんではないが、一応きつめにキャピタルを注意した。

「そうだ白山羊、翻訳デバイス返すわ。翻訳デバイスの中にブルーセルも一緒に写ってる写真が入ってる」

「むっ・・・・・・、ちょっと見せて」
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