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文字数 1,066文字

「ブルーセル、頼む」

 (ひづめ)を鳴らすと火花が散った。枯草の塊にうまい具合に火がついて、たき火が完成した。

「キャピタル、きのこを刺す枝も探そうぜ」

 食うのは躊躇(ちゅうちょ)するが焼く気は満々である。

「ナラタケってどんな味だろうな」

「食うのはダメだってさっき言ったろ。今日は焼くだけだ、あきらめろ」

「いいや、食べたい。ちょっとでいいから食べる」

 箸をスタンバイして離さない野郎がちょっとで済ますとは思えない。

 これは、阻止するために全力で戦うことになるかもしれないとソロは思った。

 今の自分にはノウゼンカズラが生えているから、善戦できる気がする。

「そういえば、お前アメリカンドッグ非常食にしてんだから、ケチャップとか持ってないのかよ」

「あるわ。持ってるわ、ポッケに入ってるわ今」

「それ吸っとけ」

 たき火で温まっていると、隅っこでブルーセルが何かをしきりに嗅いでいた。

 キャピタルと一緒にのぞき込むと、きのこが生えていた。品種は不明だが、先ほど生えていた硬いきのこと形状が違う。

「もしかして、これがナラタケか? 」

「よし焼くぞ」

 キャピタルがナラタケ(仮)に手を伸ばすと、ブルーセルが横取りして食べてしまった。

「おれのきのこだぞ! 」

 先に見つけたのは山羊だ。

「キャピタル、そんな品種もわかんねーきのこなんか食うなよ。危ねぇだろ」

「おっ、山羊って上の歯ないんだな」

「オレの話聞け」

 だが、突然ブルーセルがモグモグしていたきのこを吐き出した。

「あっ、やっぱダメだ。まずいんだ」

 まずいきのこがよっぽど気に食わなかったのか、(ひづめ)で攻撃し始めた。
 同じ菌類として見ていて忍びない。

「ブルーセル、落ち着け。どう、どう」

 ソロがなだめようと近づくが、そのすぐ脇でキャピタルがまずいきのこに手を出そうとしていたので箸を奪った。

「あっ」

 奪った箸は暗闇に放り投げた。

「ああっ、なんつーことを! 」

 これで少し時間が稼げる。

 キャピタルが箸を探している間に、ソロはブルーセルが攻撃しているきのこに目をやった。すると、そばにまたあの黒い紐のようなものが居た。

 さっき見つけたものよりも太く、縄、いや、蛇のように見える。

 真っ黒で、束ねた針金のような質感の繊維が森の奥まで伸びている。

 その繊維質の脇にある倒木や枯れ木が、白く腐りかけていた。

「なんなんだ。このぶっといヤツは」

 もう一度地面から引きはがせないかチャレンジしようとしたところ、ブルーセルが急に荒ぶり出した。

 黒い繊維に角を突き刺し、思い切り頭を振って地面から引きはがした。

「うおっ、何だ急に。どうしたブルーセル」
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