p110 キャピタルの鼻歌、役に立つ

文字数 1,269文字

「ほら、キャピタルも帰れだって。安全なとこから応援してくれよ」

「僕らがBM菌で呼び出された協力者かもよ? 帰ったらマズイんでないの? 」

そう言われればそんな気もするが・・・・・・、いや、しない。

しない。

「んんんんんんン゛! 」

 そうこうしている内に、キャピタルの体中から血管が浮き出て、顔が真っ赤になった。

 ブルーセルも息を荒くしてキャピタルの腹筋を押す。

「んがああああああああああああッ! 」

 キャピタルの雄たけびと共に、突如、木々の間から鳥が集団で飛び立つ音が響き渡った。地鳴りのような音とともに、大地が波打つ。

 大地震の記憶が蘇って、ソロとキャピタルの全身がすくむ。

 体から力が抜け、ブルーセルの頭が腹部にめり込んでキャピタルは吐きそうになった。

だが、

「みんなぁ、今だぁ! せえーのっ」

たぬキノコ一族が声を張り上げ足並み揃え、一斉にキャピタルとソロを引っ張り出した。

「ん-んっんんんっんんーんっんっん、んんんーんんんっん、んんんっん! 」
 
 例の鼻歌を、たぬキノコ一族が一斉に歌い出した。
 キャピタルにも聞こえるように、鳴き声を工夫して旋律を奏でた。

「ん-んっんんんっんんーんっんっん、ふんふんふんふんふーん! 」
「hurr!」

 たぬキノコ一族の合いの手で全員の力が一つになり、森の奥から伸びる根状菌糸束が、キャピタル側にグッと引き寄せられた。

「ふん、ふーん、んんんっん、んんんーんっんんんんんっんん! ふん、ふーん、んんんっん、んん、んんんんっんー!」
「Hurr! 」

 キャピタルとソロの体から怯えが消える。

「ん-んっんんんっんんーんっんっん、んんんーんんんっん、んんんっん! 」
「HUrr!」

「腕じゃねぇ、足だ! みんな重心を倒して足で引くんだ! ソロ頼む! 」

「たぬキノコ! 重心を後ろに倒して、足で引けってみんなに伝えて! 」

 キャピタルの声をソロが通訳し、一気に後ろに重心が傾く。

「ん-んっんんんっんんーんっんっん、ふんふんふんふんふーん! 」
「HURr!」

 たぬキノコ一族の合いの手に、ソロとキャピタルとブルーセルの野太い声が加わって、みんなの力が一つになり、更に根状菌糸束が引きずり出された。

「ふん、ふーん、んんんっん、んんんーんっんんんんんっんん! ふん、ふーん、んんんっん、んん、んんんんっんー! 」
「HURR! 」

 五度目の合いの手で、ソロはキャピタル向かって叫んだ。

「がんがれピャピタル! お前だけが頼りだ! 」

「任せろし! 」

 キャピタルの腹筋が再び鋼鉄のような固さを帯び、
 血液に乗って酸素が全身に行き渡る、
 体温が上昇して汗が噴き出す、
 その熱で蒸気が上がる、
 そしてついに、
 キャピタルのピチTが上半身の筋肉の膨張に耐え切れず、内側から裂け始めた!

「HURRンンンン゛ン゛ゥンどォっすこおぉおおおおおい! 」

 大きな手ごたえが引きずり出されるような感覚が手から伝わって、キャピタル一行が一気に後方へ歩を進めた。
 
 キャピタルは根状菌糸束を肩に担ぎ、森の奥から本体を一本背負いする気で投げの態勢に入った。
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