p52
文字数 1,085文字
「願いを叶えた」
捕食者の言動や思考はわからない。
だが、ガワに詰まっていた胞子が害を及ぼすことなく捕食者に抱擁 されたのは、同族だと認識したからだろうか。
それなら、ソロたちだって同じRM菌を保持しているのだから、同族だと思われても良いと思うのだが。
天敵の行動を深く考えても理解が追い付かない。
それより、あと少しで家についてしまう。ソロはこの捕食者に聞きたいことがあった。
「オレ、こいつのことを調べに図書館へ行ったんだ」
リュックから林田の顔写真が載ったコピーを取り出すと、捕食者へ渡した。
「オレの友達。林田ろョウっていうんだ。人間部分が行方不明なんだ。きのこの部分も今朝、ツル太郎に真っ二つにへし折られちゃった」
「死んだも同然だな」
「オレも間違えて万年筆で刺しちゃったけど」
「そっちが致命傷になったんじゃないのか」
都合の悪い部分は無視してソロは続けた。
「でも、大人が言うには林田は自分の菌類と合わなくて体が弱くなってたから、菌類から分離した人間部分は元気になってるんじゃないかって言ってた」
「希望的観測に過ぎない」
「林田とツル太郎、同じ顔なんだ。オレもきのこ化のせいなのか、友達だったのに林田のこと全然思い出せないし・・・・・・」
「人間が捕食者の菌類に寄生されて進化を遂げることはある。同じ顔をしているのなら、林田ろョウはツル太郎になったのだろう」
「ろョう、だ」
「ろョう」
「リと小っさいョ」
「リョウか」
「オレ、ラ行苦手なんだよ・・・・・・。あと友達の名前も苦手でしょっちゅう噛む」
「口を開かないで話そうとするからだ。菌類に任せるがままにせず、口から養分を摂取して鍛えろ」
「ヤだ。めんどくさい」
「林田リョウを思い出せないとはどういうことだ」
「好きだったってこと以外、ほぼ記憶に残ってないんだ。顔と名前だってわからなかったし、声とか、どんな性格だったとか、仕草とか、何して遊んだとか。浮島のクエスト受注と引き換えに、林田の人間部分の捜索を警察から軍が引き継いでくれたから一安心なんだけど」
「軍のおでましか」
「でも、オレの記憶の方は戻る気がしない」
「林田リョウ以外のことはどうなんだ」
「そっちは特に意識したことないけど・・・・・・。とりあえず林田関連のことがピンポイントでぼやけてる」
「林田リョウの存在は覚えているが、詳細が思い出せないのか」
「そんな感じ。そろそろオレんちだ。あそこのゴミが溢れてる家がオレんち」
稲光に一瞬照らされて、ソロの家のシルエットが映った。暗闇の中でもわかるほど蔓 に覆われて、その間からゴミが溢れている。
「良く燃えそうだ」
「不吉なこと言うな」
捕食者の言動や思考はわからない。
だが、ガワに詰まっていた胞子が害を及ぼすことなく捕食者に
それなら、ソロたちだって同じRM菌を保持しているのだから、同族だと思われても良いと思うのだが。
天敵の行動を深く考えても理解が追い付かない。
それより、あと少しで家についてしまう。ソロはこの捕食者に聞きたいことがあった。
「オレ、こいつのことを調べに図書館へ行ったんだ」
リュックから林田の顔写真が載ったコピーを取り出すと、捕食者へ渡した。
「オレの友達。林田ろョウっていうんだ。人間部分が行方不明なんだ。きのこの部分も今朝、ツル太郎に真っ二つにへし折られちゃった」
「死んだも同然だな」
「オレも間違えて万年筆で刺しちゃったけど」
「そっちが致命傷になったんじゃないのか」
都合の悪い部分は無視してソロは続けた。
「でも、大人が言うには林田は自分の菌類と合わなくて体が弱くなってたから、菌類から分離した人間部分は元気になってるんじゃないかって言ってた」
「希望的観測に過ぎない」
「林田とツル太郎、同じ顔なんだ。オレもきのこ化のせいなのか、友達だったのに林田のこと全然思い出せないし・・・・・・」
「人間が捕食者の菌類に寄生されて進化を遂げることはある。同じ顔をしているのなら、林田ろョウはツル太郎になったのだろう」
「ろョう、だ」
「ろョう」
「リと小っさいョ」
「リョウか」
「オレ、ラ行苦手なんだよ・・・・・・。あと友達の名前も苦手でしょっちゅう噛む」
「口を開かないで話そうとするからだ。菌類に任せるがままにせず、口から養分を摂取して鍛えろ」
「ヤだ。めんどくさい」
「林田リョウを思い出せないとはどういうことだ」
「好きだったってこと以外、ほぼ記憶に残ってないんだ。顔と名前だってわからなかったし、声とか、どんな性格だったとか、仕草とか、何して遊んだとか。浮島のクエスト受注と引き換えに、林田の人間部分の捜索を警察から軍が引き継いでくれたから一安心なんだけど」
「軍のおでましか」
「でも、オレの記憶の方は戻る気がしない」
「林田リョウ以外のことはどうなんだ」
「そっちは特に意識したことないけど・・・・・・。とりあえず林田関連のことがピンポイントでぼやけてる」
「林田リョウの存在は覚えているが、詳細が思い出せないのか」
「そんな感じ。そろそろオレんちだ。あそこのゴミが溢れてる家がオレんち」
稲光に一瞬照らされて、ソロの家のシルエットが映った。暗闇の中でもわかるほど
「良く燃えそうだ」
「不吉なこと言うな」