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文字数 1,065文字

 流暢(りゅうちょう)で異国感溢れる素晴らしい歌い方で、サビが待ちきれない美声だ。

「the winds blew hard, her bow dipped down Blow ,me bully boys ,blow」

「Huh!」

 ソロとキャピタルは条件反射で野太い力の(こも)った合いの手を入れてしまった。

 サビの手前で放たれる重要なパートなので、ここで気を抜いたら盛り上がりにかけてしまう。

「バカ(ども)が。()かったな」

 美声の主はバンクだった。
 弟の習性を利用した狡猾(こうかつ)なやり口だ。

「合いの手はHuhじゃないHurr! だ」

 たしかに。Hurr! の方が気合が入れやすい。

「大人しく投降しろ」

 親切に合いの手を伝授してくれたが、サビまで歌う気は無いようだ。

「くそっ、やっぱ嫌なヤローだぜ」

「二人とも、僕について来て! 」

 たぬキノコが、向かいの公園で遅れて付いてきた足とは思えない速度を出して走り出した。

ソロとキャピタルも続く。

「大丈夫! 校長先生が

してくれるから」

 たぬキノコの信号と共に、辺り一帯が光った。
 同時に轟音が轟く。

「ひいいっ!」

 とんでもなく近い場所に雷を放ったらしい。
 雷が苦手なキャピタルの足が(ひる)んで止まる。

「バカヤロー! 走んなきゃ教会に一人で立たされるぞ! 」

神前式(しんぜんしき)じゃねーのかよ! 」

 身を低くしてキャピタルが再び走り出したのを確認して、ソロも先を急いだ。

「生まれ変わったプロトタキシ―テスが人為的な雷の刺激で一気に育つよ! もっと早く!」

 人間がついて行くのがやっとなくらい、タヌキの足が速いとは知らなかった。

 早く走れる体の構造ではないはずなのに、たぬキノコは稲妻のように地を走り抜ける。

「だめだ、間に合わない」

 たぬキノコの諦めの声と共に、十メートルほど先の広場から、地面から吹き上げるようにして生まれたばかりのプロトタキシーテスが天に向かって伸びた。

 凄まじい速度である。
 落雷と生まれたばかりのプロトタキシーテスに、園内から歓声が上がった。

「ああ、間に合わなかった。生まれたばかりのプロトタキシーテスに乗って浮島へ逃れようとしたのに」

 たぬキノコはその場にへたり込み目を潤ませた。

「いやいやいや、たぬキノコ。あんなのに乗っかろうなんて無茶だぜ。あんなん振り落とされてデッドエンドよ」

「えー、ダメだったかなぁ」

「どうっすっかな」

 ソロが生まれたばかりのプロトタキシーテスを見上げると、目の前に不思議なものがぶら下がっていた。蔓性(つるせい)の植物だ。小葉(しょうよう)羽状(うじょう)に密集している。

「なんだぁ? プロトタキシーテスの一部か? 」
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