p13 きのこの夢①

文字数 416文字

「どうして初対面で睨まれたり、ケンカを売られんだろ。なんか悪いことしたかな」

 富士山の降灰の中、公園の楡の木にカラスが止まっていた。

 灰にまみれて平気なのだろうか。

「それはきっと才能だ。初対面で相手の気分を害するって、なかなかできない気ぃするし」
 誰かと話をしているようだが、マスクとゴーグル姿で相手は不明だ。

「他人の敵意を最大限引き出す、類まれなる才能」

 空は灰に覆われて、肌寒い。灰が落ちやすい素材の衣類が、肌に触れるたびに冷たい。もう一枚下に着てくればよかった。

「えぇ・・・・・・、才能て」

 もっと他に原因があって、理由がわかればやらないのに。

 人間は助け合ってきたから今日まで生き延びることができた。輪に入れなかったら生きて行けない。

 孤独は悪いことをしたときに下される罰だ。何も悪いことはしないないはずなのに、どうして自分は、罰を受けてしまうのだろう。

「僕、ちゅんちゅんちゅんてきり、言えないんですけど」


「あんだって? 」



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