p66 男はおれ以外絶滅していい

文字数 1,061文字

そもそも、自分以外全員女子のグループになぜ組み込まれたのか理解できない。

 手乗りアベイユは一人称が『僕』だが、明らかにベースが女子だ。

「あなたは・・・・・・松本さんていうんだよね・・・・・・」

「えっ」

 手乗りアベイユが自分を知っていてソロは驚いた。
 病院以外三年も外へ出ていなかったきのこが、なぜ。

「どうして、オレのこと」

「林田さんがよく話してくれたから・・・・・・。同じ病院にいたから・・・・・・」

「よし同じ班の奴らの顔は覚えましたね! 当日はこのメンツで行動するように。通常授業を開始します、席に戻ってください! 」

 手乗りアベイユからもっと話を聞きたかったのに、公民教師のデカい声で何もかも(はば)まれてしまった。

 クラスメイトは従順に元の席に戻ってしまうし、アベイユはそのサイズからか黒板の真ん前の席だしで、ソロは完全に機を逃した。

「お前いいなぁ。女子に囲まれて」

 キャピタルは教科書で弁当を隠して、さっそく食っている。

「林田と同じ病院にいたきのこと一緒になった」

「三人とも女子かぁ。三人も女子がいていいなぁ」

 女子に目が眩んでいるのみで反応が薄い。気持ちはわかる。もはや女子というだけで存在そのものが可愛いのだ。

 特にキャピタルは一人称が僕だろうが手乗りサイズだろうが何だろうが、女子の気配を感じればすぐに探知する。

「女子と同じグループいいなぁ。塩サバ食う? 」

「食う」

 ソロも教科書で隠してこっそり食べる。
 口から何か摂取するのは久しぶりだ。

 腹を壊さないように、よく噛んでから飲み込んだ。

 昨晩ガラテアにも「口から養分を摂取して鍛えろ」と言われたことだし、もう一口食べても良いかな、と思った。

「キャピタルは班分け、どうだったん」

「野郎ばっか。つまんね」

 塩サバはすでに弁当箱から姿を消していた。何なら全部無い。

「男はおれ以外絶滅して良いんだけどなぁ」

「キャピタル以外の男がいなくなっても、女には選ぶ権利があるんだぜ」

「 ? 」

 キャピタルの頭に『 ? 』が浮上した。
 頭上に『 ? 』が付いているのは今に限ったことではないが。

 ソロの言っている意味を理解できなかったのか、受け入れたくなかったのか、聞かなかったことにしたのか、間を置いてからキャピタルは例の鼻歌を開始した。

 ソロはつられて縦ノリになりそうになるのを堪えて、首だけで拍子を取った。

 まだ首が完全に繋がって無いのか、一瞬ぐらっと来た。

 授業は話が脱線して、ブラック企業の見分け方について熱く語っていた。
 期末テストのサービス問題として出すつもりらしい。

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