p21 きのこの夢②

文字数 411文字

「鳴き声が違うんじゃね? 」

「なきごえ? 」 

 富士山の降灰(こうばい)の中、呑気(のんき)に公園のベンチに座って誰かと談義(だんぎ)している。

 マスクとゴーグルで、やっぱり相手は誰だか不明だ。

「子供んときにお母さんに読んでもらったんだ。鳴き声が違うから仲間じゃない、って、休ませてもらいない小鳥の話。だから、そういうことなんじゃね? 」

 池の周りに植わった(アシ)が、風で揺れている。

 (アシ)の間から、二羽の(カモ)が泳いでいるのが見えた。
 背中に灰が積もっている。


「そんな理由で周囲に馴染めないなら、どうしようも・・・・・・」



 涙が出て来る。


 恥ずかしい、一番涙を見せたくない奴の前で。


 すぐに泣いてしまうところが、周囲をイラつかせるのに。

「図書館行こ」

「え? 」

 どうして

「その絵本見よ。夜の図書館、限定のメニューあるらしいぜ」

 どうして、泣いても、嫌そうな顔をしないんだろう。

「行こ」
 
 頬に向けて手を伸ばして

「うん・・・・・・」

 涙を拭いてくれる指が、哀しい。
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