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文字数 1,057文字
こんもりとしたシルエットが遠くに見える。
白山羊の浮島のように、周囲が防風林で囲われているようだ。
だが、地面は枝で埋め尽くされており、かなり荒れた状態となっている。
「以前ブルーセルが訪れた時よりも荒れているらしい。ナラタケの気配はそこら中からするそうだから、みんな気を付けろよ」
「どう気を付けろっつーんだよ」
「知らぬ」
「白山羊はなんでついてきたんだよ」
「私はタヌキの浮島のお偉いさんと交渉しにきたのだ。タヌキは交渉に使うから連れて行くぞ。ブルーセルをしっかり守るのだぞ」
「無茶言いうなよ。じゃあ、ブルーセルも連れてけよ、オレらはテキトーに隠れてっから」
「ブルーセルはやる気満々だ。私の言うことなんぞ聞きゃあしないよ。見ろ、あんなに蹄 を鳴らして」
確かに。メチャクチャ蹄 を打ち鳴らしてブンブン角を振り回している。
オマケに蹄 から火花のような光がチラチラと散っている。
「ブルーセルの蹄 は火打石のようになっている。灯りが欲しいときはアレを火種にするといい」
「なんなんアイツは。神獣か」
キャピタルに頭突きしたり、腐っていない木の皮を食べたり、自由過ぎる。
「ソロ、こんな危険なところへ連れて来てごめんなさい。やっぱり、僕と一緒にエライ人たちのところへ」
「だめだ、まちゅもとソロとパピタンはブルーセルの用心棒だ。たとえその身が滅んでもブルーセルから離れるな」
「パピタンじゃなくてキャピタルだって」
「パピタンだろうがカピタンだろうが、ブルーセルから離れたら熊の餌にするぞ! 」
白山羊の剣幕にたぬキノコとソロは怯んだ。
「な、なんだよ。ブルーセルのことになると妙にムキになるじゃんかよ」
「当然だ。ブルーセルは私の子供だ」
「固有名詞なんかどうでもいいって言ってたのに、ブルーセルは名前で呼んでいたのはそういうことだったんか」
「私がきのこになっても、ブルーセルだけは特別だ。宿主が腹を痛めて生んだ記憶が、脈々と菌類の隅々まで行き渡っている。愛しさも悲しさもひとしおよ」
「悲しさ? 」
「3年前のナラタケ退治で、私は自分の子供を三人連れて行かれて、生き残って戻ってきたのがブルーセルただ一人。上の兄二人は死んでしまったのだ」
白山羊の横長の瞳が、心なしか潤んでいるように見えた。
「すまぬ、小腹が空いて取り乱した。その頭に生えている花をちょっと食わせておくれ」
「え、べ、別に、いいけど・・・・・・」
突然の申し出に驚いたが、ソロは恐る恐る頭のノウゼンカズラをちぎって、白山羊の口元へ運んだ。
痛くは無いが、ちょっと複雑な気持ちになった。
白山羊の浮島のように、周囲が防風林で囲われているようだ。
だが、地面は枝で埋め尽くされており、かなり荒れた状態となっている。
「以前ブルーセルが訪れた時よりも荒れているらしい。ナラタケの気配はそこら中からするそうだから、みんな気を付けろよ」
「どう気を付けろっつーんだよ」
「知らぬ」
「白山羊はなんでついてきたんだよ」
「私はタヌキの浮島のお偉いさんと交渉しにきたのだ。タヌキは交渉に使うから連れて行くぞ。ブルーセルをしっかり守るのだぞ」
「無茶言いうなよ。じゃあ、ブルーセルも連れてけよ、オレらはテキトーに隠れてっから」
「ブルーセルはやる気満々だ。私の言うことなんぞ聞きゃあしないよ。見ろ、あんなに
確かに。メチャクチャ
オマケに
「ブルーセルの
「なんなんアイツは。神獣か」
キャピタルに頭突きしたり、腐っていない木の皮を食べたり、自由過ぎる。
「ソロ、こんな危険なところへ連れて来てごめんなさい。やっぱり、僕と一緒にエライ人たちのところへ」
「だめだ、まちゅもとソロとパピタンはブルーセルの用心棒だ。たとえその身が滅んでもブルーセルから離れるな」
「パピタンじゃなくてキャピタルだって」
「パピタンだろうがカピタンだろうが、ブルーセルから離れたら熊の餌にするぞ! 」
白山羊の剣幕にたぬキノコとソロは怯んだ。
「な、なんだよ。ブルーセルのことになると妙にムキになるじゃんかよ」
「当然だ。ブルーセルは私の子供だ」
「固有名詞なんかどうでもいいって言ってたのに、ブルーセルは名前で呼んでいたのはそういうことだったんか」
「私がきのこになっても、ブルーセルだけは特別だ。宿主が腹を痛めて生んだ記憶が、脈々と菌類の隅々まで行き渡っている。愛しさも悲しさもひとしおよ」
「悲しさ? 」
「3年前のナラタケ退治で、私は自分の子供を三人連れて行かれて、生き残って戻ってきたのがブルーセルただ一人。上の兄二人は死んでしまったのだ」
白山羊の横長の瞳が、心なしか潤んでいるように見えた。
「すまぬ、小腹が空いて取り乱した。その頭に生えている花をちょっと食わせておくれ」
「え、べ、別に、いいけど・・・・・・」
突然の申し出に驚いたが、ソロは恐る恐る頭のノウゼンカズラをちぎって、白山羊の口元へ運んだ。
痛くは無いが、ちょっと複雑な気持ちになった。