第2話

文字数 1,014文字

路地は昼間というのに薄暗くランプや蝋燭で明かりを灯している。通路には沢山の人達が行き交っている。

店先には見たことのある雑貨品や食材などあるが奥に進むに連れて見たことのない物が多くなった。

機械か何かの部品?用途が分からない
ガラス瓶に目玉が詰まっている…動いている!
頭が二つある魚…気持ち悪い
鳥籠に入れられた極彩色の派手な鳥…火吹いた!
小人のミイラ…何それ…

「どうだ、なかなか面白いだろう」探偵はまるで祭りに来た子供の様に笑みを浮かべていた。

「そ、そうですね…ちょっと私には何がなんだか分からない物が沢山あって…」

助手が戸惑いながら辺りを見渡した。

物が溢れているが行き交う人達が素人の私にも判るぐらい柄が悪そうな人相をしている。

「あんまりここいらの人の顔を見るなよ。ここは

だ」

一軒の店で先生が足を止めた。

歯車やバネなど何かの部品が並んでいる。

「これを見てみろ、面白い物があったぞ」先生が即席の棚に陳列された小さな置き時計を指差した。

特に目新しい感じはしない、市販に売っている物と変わらない気がする。

「こいつは

だ、まだ現存してたとは驚きだ」

「天命時計って何ですか?」

「自分の命が尽きた時になる時計さ、長針先にに自分の血を付けるとその人間の命が尽きた時にどんなに離れていてもベルが鳴るんだ。高度な魔法装飾職人しか作れない、今は作れる人間はいないだろう」

「何か気味が悪いですね、自分が死んだ時に鳴る時計なんて。需要があるとは思えないなですが」

「戦争だよ。自分が戦地に行く際に家族に渡すのさ、何年も音沙汰がなく待たされるのも辛いものなのさ」

「お客さんお目が高いね、掘り出し物だよ」店主の老人が話しかけてきた。

「古い貸倉庫を買い取った際に見つけた一品だよ、今ならまけておくよ」

「へぇ、いくらだい」

「未使用品だからね、一万ガリオンだな」

「そんな馬鹿な話があるか、よく見ろ確かに未使用だが傷だらけで文字盤も随分劣化して読みづらいじゃないか。せいぜい半分の五千だろ」

「いや何を言ってるんだい。これもあじな物ってじゃないか、まけても九千だな」

「いいや、五千だ」

先生と店主が言い争いを始めた。

(いつもこんな感じで買ってるのかな…)

正直、少し疲れてきた。目新しい物が溢れて目が回ってきていた。

辺りを見渡してみた、相変わらずさっぱり分からない物が…

(あれは…)

路地の先に小さ青い光が輝いていた。

少しずつ人混みを避けながら近づいて行った。









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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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