第4話
文字数 1,396文字
探偵は紅茶にまだ息を吹き掛けている。
(猫舌なのかこいつ)
「おじいちゃんが最後に残した手紙に今までに取り戻した絵の在処と直ぐに身を隠すようにと書いてあった。私は学校の寮から逃げ出し名前も変えて仕事と住む場所を見つけた。だけど…」
レイニーは壁に掛けられた油絵を見た。
「絵が好きだった、絵のせいで父さんとおじいちゃんは殺されたけど絵は嫌いになれなかった。母さんと私も父さんとおじいちゃんの絵が大好きだった、楽しい時も悲しい時も絵に支えられた。だから絵に関わる仕事がしたかった」
「そんで画廊か、それなら絵の情報も手に入る訳だな。だが諦めろ、あの
まだ紅茶に息を吹き掛けながら話しする探偵にレイニーは驚きを隠せなかった。
「どうして分かるの…次の標的と盗む手段脱出方法まで…全部お見通しなの…」
探偵はようやく紅茶を飲み始めた。
「まあ、家を出てもあの一族の血が入っているからな、奴らのやり方も多少は分かる…熱っ」
探偵は飲むのを止めた。
「じゃあどうしろと、私はこれから何を目的に生ければいいの」
最初の頃より大分意気消沈をしていた、探偵は紅茶をテーブルに置いてレイニーに話しかけた。
数日後
今日も暇だ、新聞を読みながらラジオを聞き人肌の温度の珈琲を飲む。
助手も特にする事はないようで自分の机で小説を小説を読んでいる。
変わった事といえば手紙が一枚届いたぐらい。
探偵は新聞を折り畳み、再度読み返した。
あなたに言われた通りに海外に行く事にしたわ
色々とあなたが手回ししてくれたお陰で何とか
別にあなたにお礼なんかしたくないけど
ありがとう
「聞いときたい事が沢山あるって顔だな」
二人は川の対岸から画廊が燃えている景色を見ていた。
「どうして私の魔術が発動しなかったの」
「企業秘密」
「金庫の場所と番号は」
「勘」
「はあ…答える気はないのね」
「本当の事を話しただけさ…ふあぁ~眠い」
探偵は大きなあくびをした。
「ずっと雨が降っているの」
探偵はレイニーの顔を見た、その顔は愁いた表情をしていた。
「あの日からずっと、私の心には雨が降り続いてる。涙を流す事はなかったけどずっと心に雨が降ってる、もう止むことはないわ」
「止まない雨はないぞ」
「どうかしら」
二人で焼け落ちる画廊を見続けた。
「先生、聞いてます?」
助手がポットを持って立っていた。
「何か話してたか?」
「こないだの放火、まだ犯人捕まってないですよね。嫌ですよね、早く捕まって欲しいですよね」
「ああそれか、別にどうでもいい」
「私は嫌ですよ。もしうちの事務所がされたら私丸焦げですよ」
助手は探偵のカップに珈琲を注いだ。
「そう言えばお前、今何を読んでるんだ」
「箱庭探偵の新刊です。今怪盗を追い詰めているところです」
「ふーん」
(またあいつから使用料をいただかないとな)
「先生は怪盗とか捕まえないのですか?ほら黒雨でしたっけ、先生なら捕まえられないのですか」
「興味ないね」
探偵はカップを手に取り口に運んだ。
「熱っ」
第12章
止まない雨
終