第2話

文字数 766文字

どんよりと曇った空、通勤ラッシュの足音を聞きながら探偵は喫茶店で紅茶を(すす)った。「熱っ、くそまだ熱いじゃねえか」

「相変わらずあんたは猫舌だな。いい加減に次から冷たいのを頼めよ」
喫茶店のマスターはやたらと図体のでかい体を揺らし笑った。

「うるさい、俺は人肌ぐらいの温かいのが飲みたいんだ」

「わかったわかった今度から氷を入れてやるよ」

馬鹿にしやがってと呟きながら店の外を見た。

帝都を行き交う人々は年々増していくばかりだ。
人だけではない、近年バスや車も増えてきている、車はごく一部の富裕層だけだか


「こんなに急いでどこ行くんだろうな、あいつらは?」窓から見える景色を見ながら探偵は紅茶の入ったティーカップを持ち息を吹き掛けながら尋ねた。

「そりゃ仕事に行くに決まっているだろ」

「やだやだ、これだから仕事人間は。同じ服を着て似たような髪型にして朝早くから夕方遅くまで働くなんて、俺はゴメンだね。まるで兵隊アリのようだ、いやアリの方がましか」

「いやいや、お前が働かないだけだろう、しっかり働け」

「いいんだよ俺はこれで」

「お前んところ助手がいるだろ、ちゃんと飯食わせてやってるのか、お給料出してやってるのか、心配だぜ」

「大丈夫だって、まあ…この間はちっとばかし揉めたが問題ない」

「ちっとばかしね…」

マスターは探偵の顔見た、見事に右目が腫れあがりアザができていた。
「拳闘大会に出るのも仕事のうちか、墓場のグールより酷いぜ」

「うるさい、黙ってろ」
探偵は機嫌を損ねた。

「話しは変わるんだが…」
マスター真剣な眼差しでをして手招きした。
探偵は顔を近づけた。
「例の件、上手くいったか」

「はぁ…あれか」
探偵はため息を吐いた


    
                
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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