第1話

文字数 538文字

[国営ラジオが正午をお伝えします]


探偵は椅子に座り、ラジオに耳を傾けながら新聞を読んでいた。


[続いてのニュースです。三十年の沈黙を破って怪盗黒雨(こくう) が国立美術館に予告状が届けられました]


探偵が読んでいる新聞にも怪盗に関する記事が載せられている。
「怪盗ねぇ…」
新聞を読み進めた。
交通事故…政治家の汚職…鉱山事業の買収…内戦規模縮小化…テレビ到来…鉄道路線拡大…本日のお買い得品…

 
[ターゲットにされたの「炎海(かいえん)の街並み」と呼ばれる作者不明の絵画で価値は数億になるとも言われて…]


探偵は突如立ち上がりハンガーに掛かったよれよれのコートを手に取り出かける支度を始めた。

「只今帰りました」
助手が両手いっぱいの食材の入った紙袋を抱えて戻ってきた。
「やっぱり自転車があると便利ですね。買い物が楽できますよ」

「おい出かけるぞ、そいつを置いて荷物をまとめろ」
探偵は足早(あしばや)に外に向かった。

「え、先生どこに?」

「決まっている」
探偵は振り返った。

を捕まえるぞ」
探偵は飛び出して行った。

「先生ラジオを止めてから出掛けて下さい」
助手はラジオを止めて、すぐさに探偵の後を追った。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み