第1話

文字数 692文字

溜まりに溜まった仕事がようやく終わり夕焼けを背に助手は自転車を漕いだ。

終わりが見えないと嘆き悲しみ、発狂しかけた先生とそれをなだめていた私は依頼報告書を届けて今まで抱えていた仕事を全て終えた。先生は今頃、魂が抜けた様に疲れはてて倒れ込んでいるだろう。仕事の後半に先生が頼む殺してくれ、楽になりたいと言った時はさすがに同情した。
 
普段、暇をもて余す先生があれだけ頑張ったのだから称賛に値する。何かご褒美を与えよう。折角だし夕飯をご馳走しよう、しかし今から作ると遅くなる。市場で惣菜を買って帰ろう。コロッケにしよう、ソースはある、付け合わせにキャベツも買って、よし決まりだ。

市場に到着し、惣菜屋に向かった。思いの外買い物客は多かった。惣菜屋の前は炒め物から揚げ物、サラダに異国の料理がところすましと並んでいた。
「おじさん、コロッケ二つ…いや四つ下さい」
「おっチャシャちゃん、ハイよ!なんかいいことあったんかい?」
「溜め込んだ仕事が終わったの」
店員は素早くコロッケをトングでつかみ包んだ。
「はいお待たせ」
店員は助手にコロッケを渡し、助手はお金を渡した。
「はいよ、お釣」
「あれ、お釣が多いけど…」
「お得意様だからサービスさ、それとよあいつの下じゃあろくな給料貰ってねえだろう。心ばかりの気持ちさ」
「ありがと、おじさん」
心晴れやかに自転車に乗り事務所へと帰ってきた。

「先生ただいま帰りました。今日は私が夕御飯をご馳走しますね」
しかしそこには先生の姿はなくテーブルに一枚の紙切れに何か書かれている。


探さないで


                  
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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