第1話

文字数 486文字

夕立に降られながら紙袋に入った焼きたての惣菜パンを抱え足早に事務所に帰ると助手と見知らぬ青年がテーブルを挟んでソファーに座っていた。
「お帰りなさい、先生」
探偵は察した、まあ助手も年頃だし彼氏ができてもおかしくないか。
助手がタオルを渡してきたので紙袋と交換した時、助手が
「先生に依頼人が…」
「嫌だ!」
即答だった
「せっ先生?」
「嫌だ!今日仕事したくない、帰って熱いシャワー浴びて温かいお茶飲んでパンをかぶりつきながら寝たい!」
助手は探偵を部屋の隅に追い込んで言った
「2週間ぶりの依頼です、そろそろ働いて下さい」
「それより袋を見ろ、カンテラ通りの新しいベーカリーのだ、パンの中に厚切りベーコンと半熟卵だぞ、絶対うまいに決まっている」
「あぁぁ…」
助手の顔に笑みがこぼれたがつかの間
「おい、話し逸らすな」
ドラゴンの形相(ぎょうそう)で睨み胸ぐらを掴んだ
「仕事…しろ」
「…」
「返事」
「…はい」

「それで…ご依頼の内容は」
助手がパンをかぶり付きながら聞いた
青年は震えながら言った
「はい…お願いあって参りました。お力をお貸しください。」

「ある人を…彼女を助け出して下さい」

                
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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