第4話

文字数 1,037文字

原因がわかれば万事解決だ。
(後は

を使って…)探偵は自分の部屋に向かおうとした時、ふと目線に入るものがあった。
仮眠室、助手の部屋だ。少し扉が開いている。
恐る恐る近づいて見た。
「チャシャ」返事がない。
ゆっくりと扉に手をかけた。唾を飲み込む。
「チャシャ入るぞ」扉を開いた。

部屋は静かだった。だが助手が寝ているはずのベッドには空だった。
部屋の中央には倒れた椅子が転がっていた。
そのまま目線を上に向けた。

助手がいた、首を吊っている。

天井のファンに紐が結ばれ、その紐で首を吊られ足が中に浮いている

一瞬息ができなかった、両膝を着いた。
浅はかだった…何で…
探偵は次第に呼吸が早くなり過呼吸をし始めた。

ふざけるな…ふざけるな…
ふざけるな!



目を覚ました。時計を見た。三時半を過ぎていた。
寝すぎた、助手はベッドから降りて大きなあくびと背伸びをした。
「先生、まだ寝てるかな」
助手は部屋をでた、先生はいない。
部屋を歩いた、ん、助手は暖炉の棚に目がいった。
棚の後ろの壁がひびが入っている。
(こんなひびあったっけ)
あとこのひびの前に何か置いてあったような…
思い出せない。忘れるぐらいなら大した事ではないのだろう。
自分に言い聞かせた時、裏口から物音が聞こえた。

「先生」
そこにはドラム缶の底をくりぬいて火口と金網をつけた即席のコンロで火を起こす探偵がいた。
一瞬火口からもれる火の色が黄緑色に見えた。
(気のせい?)
「先生何燃やしてるんですか」
探偵は何も答えなかった。虚ろな目で火口を見ていた。
「先生、どうしました?」
探偵は側に置いた火かき棒を火口に突っ込み何かを書き出した。ごろっと転がっていた。
「これって…」
「ちょうどいいだろう」
探偵は軍手と新聞紙を使ってつかみ二つに割った。
「うわー美味しそう」
ホクホクと湯気がでて黄金色の断面を見せた。
「芋が残ってたから落ち葉をかき集めたついでに焼いてみた。ほら受けとけ」
探偵は新聞紙ごと助手に手渡した。
「はっはっ暖かい」助手の笑みがこぼれた。
探偵は助手の笑顔を見て少し安堵した。
「先生早く食べないと冷めちゃいますよ」
「そうだな」
二人は火に当たりながら芋を頬張った。
だが探偵はどことなく寂しげな表情を浮かべていた。



                第9章
              死滅回旋
                 完
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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