第6話 後編

文字数 933文字

探偵とマレーは一旦喫茶店に立ち寄った。
時喫茶店の扉が開きマレーの部下が箱を両手で抱えて入ってきた。
「お、持ってきたのか。ってこれだけか?」
マレーは箱を受け取ったあと部下に耳打ちをされた。
「…そうか…他には…分かった、もう帰っていい、車は置いていけ」
そう言い部下から鍵を受け取り店から出した。
「何だって」探偵は珈琲を息で冷ましながら聞いた。
「これしか持ってこれなかった、あとは機密だとさ」
探偵は箱を開けた、中にはファイルの束がびっしりと詰まっていた。
探偵は無言でファイルを取り出し早速読み始めた。
「なあ、ちょっといいか。お前がさっき言った事なんだが」マレーが聞いてきた。
「その…なんだ…犯人なんだか。幽霊?質量のあるって奴?何なんだそれ。普通の幽霊とは違うのか」
「そうだな、幽霊にも幾つか種類があるんだが、悪霊、生き霊、亡霊とか他にもいるんだが今回はどれも当てはまらないな。死霊ならできるかもしれないが」探偵は手を止めずに答えた。
死霊使い(ネクロマンサー)はどうだ?幽霊の扱いには慣れている」
「それは難しいな。本棚の壁を通り抜け、物理的な足跡を残して何の痕跡もなく殺害する霊を操る死霊使いは…」
居る、自分はこれができる奴を一人知っている。
だが、殺る理由がない。()の命令ならやりかねないが奴自身も殺る理由が無い筈だ。
「まあ、とにかく今はこの資料を調べるしかない。マスター珈琲くれ」マレーは腕まくりをした。
この量、今日中に終わる気がしない。少し心が折れかがった。


助手は恐る恐るカップを手に持ちゆっくりと口に含んだ。
「あ、美味しい」警戒していた表情が消え笑顔が出た。
「それは良かった」男は笑みを浮かべて言った。
「とっても美味しいです。同じ豆なのにどうして…」驚きが隠せなかった。
「蒸らしだよ。お茶と似てるかな、蒸らし方によって味も香りも変わる。それだけじゃない、豆の種類や焙煎、挽き方によって全て変わる。珈琲の世界も奥が深いんだ」男は自慢気に答えた。
「あの、もし良ければ他にも教えて頂けませんか」助手は頭を下げた。
「僕で良ければ」男は穏やかな口調で快諾(かいたく)した
                  
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み