第1話 前編
文字数 596文字
どれ位たったか、座りっぱなしで身体中がきしむ様に痛む、少し休憩にしようと椅子から立ち上がり雨が叩きつける窓から外を覗いた。窓の外は暗闇で見えず変わりに照明の明かりでぼんやりと室内と疲れた顔をした自分が映った。
突然部屋の明かりが消えた、またかと思い男は部屋の扉の隣にある照明の電源をいじったが反応がない。この国の電力事情でよくあることだ、慌てず側に置いてある燭台に火をともし、もといた自分の机に戻る際窓ガラスに映る自分を見た、そして自分の後ろに誰かいる。
男は振り返ったが蝋燭の薄暗い部屋を確認したが何者かがいた場所には何もなかった、部屋には自分だけだ、いるはずはない疲れているだけだ、男は燭台を机に置いた途端明かりが消えた。
「見つけた」
その声に驚き振り返ったが誰もいない、だが続け様に声が聞こえる。
「こっちを向け」
男は恐怖に震え怖じけついている時、突如喉元を何者かに掴まれた。
「間違えない、お前だ」
男は怯えながら尋ねた。
「あ、あんた誰だ」
何者が自分の顔を男に近づけた。
「忘れたとは言わせないぞ、お前が俺に何をしたか!」
「お、お前は」
男の断末魔は雷でかき消され雨が降る音だけが聞こえる。