第2話
文字数 1,081文字
最初はただの見間違いだと思ってたし、盗まれた物もなかったから軍に情報が流れて来なかったんだけど、二日前に見たと言った警備員っていうのが昔本物を見たことがあるって言うんだ。
しかも真正面で見たから間違えないって断言したのさ。そして今日の夜にあろうことが劇場で慈善活動のオークションが開かれるのさ、金持ちとお偉いさんだけのね。間違えなく今夜犯行が行われる筈だ。
そこでだ、頼むユベール。俺の代わりにそのオークションに行って真相を調べてくれ。
招待状はある。服装はまだ持ってるだろあれ。
そうゆう事で頼むよ願わくは黒雨を捕まえて来てくれ俺の将来がかかってるんだ。
夜も更けて街灯が輝かに光りだし、劇場前には人集りができていた。
ぼさぼさの髪と髭を整えた。
二度と袖を通す事はないと思っていた。
さっさと燃やしてしまえばよかったと後悔している。
マレーの野郎、後でとことん絞れるだけ絞ってやる。この借りは高いぞ。
胸に着けた中佐の階級バッチ。
軍服を纏い劇場に向かう。
こんな依頼、受けるべきではない。軍にいた過去は忘れたい。
だが真相を確かめなくては。
怪盗黒雨はもうこの国にはいない。俺が逃した。
見間違いか、なりすましか、どっちにしろこの件はうちの家族が深く関わっている筈だ。
初代黒雨はロッシュ家のお抱え絵師のだっだ。
絵の中には国の裏金、横領、賄賂諸々の金の在処の暗号が描かせた。
その絵は名の知れぬ人物が描いたとして美術館や博物館、個人所有などで分散、痕跡を分からなくさせ一部の人物だけが分かる様になった仕掛けになっている。
初代はその絵の暗号を解き私欲ではなく世のため人のため、要は義賊として行動した。
あの爺さんと親父さんとはよくしてもらった。
金が無くなったと俺の家族が気づいた頃にはそれはもう酷い慌てっぷりだった。
そう、気づいてしまった。そして消された。親族共々。
唯一生き残ったのは孫娘だった。
レイニー、二代目黒雨だ。
彼女は祖父の意志を引き継ぎ黒雨として動き出したはいいが少々抜けてる所があった。
暇な時に様子を見に行った時もかなり危ない橋を渡っていた。
俺は関係ないとはいえ親族を殺され身分を変えて生きてきたと思うと多少胸が痛む。
今俺ができる事といえば彼女を国外へ逃がす事。もうそれしかなかった。外に逃げてしまえば奴らは手を出してこない。
今頃は新たな土地て平穏に暮らしている事だろう。多分、そう願いたい。
回想も済んだ事だしさっさとこの件を解決して家に帰りたい。