第8話 後編

文字数 827文字

「仕方ない、今日は片付けたら帰るぞ」マレーは箱を持った。だが探偵の反応はなかった。
「おいどうした、帰るんだろ?」
探偵は一枚の資料を手に取り硬直していた。
「おーい、もしもし聞こえてるか?」反応がない。
(これは…)マレーは肌で感じ取った。
探偵の気配が変わった。
数秒後、探偵は持っていた資料をテーブルに置きある文面を指差した。
「…こいつだ」
探偵の雰囲気は軍人当時の気配を放っていた。
マレーは置いてあった資料を手に取り指差した箇所を見た。
「被験者の死亡診断書か」
「影の身長と足跡の大きさ、体格も合うのはこいつだ」
「それだけじゃこいつが犯人だとは流石に無理があるだろ」
「足の動きだ」
「ん?」
「あの影の足の動きは軍人、又はそれなりの訓練を受けた足の動きだ」
「だから何なんだ、さっぱり分からん」
マレーはお手上げ気味だ。
「経歴を見ろ」
「えーと…おい、これって!」
探偵は微動だにしなかった。
「こいつ軍人だ。軍事顧問(コンサルタント)病名は末期ガン、しかもあの軍事国家レガレス、うちのお得意様だ。何てこった」マレーは頭をかきむしった。
「レガレスと言えば争い事なら何でも商売する国だ。武器、兵器、兵隊、戦術、ありとあらゆるものを売ってるヤバい国だ。まあ、そんな国と仲良く取引してるのはうちの国なんだが」
「これは俺の推察の域なんだか帝国(こちら)側と軍事関係の取引があったんだろう。さもなければうちの国に外国の軍人が入ってくるなんであり得ない、鎖国が解けたと言えど人間の出入りは政府の認証がいる」
「参ったな、それで奴の名前は」



「海外かー、行ってみたいな。凄く近代的な国なんですよね」
「そんなことはないよ、えっと…」
男は言葉に詰まった。
「チャシャですチャシャ・ブラウスと言います」
「ありがとう、次は僕だね、僕の名前は…」


「奴の名前は…」探偵は死亡診断書の名前を言った。


「僕はエミール・ハリスよろしく」
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登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

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