第3話
文字数 1,113文字
金持ち、貴族達の独特な匂いだ。こういう奴らは大嫌いだ。
自分達以外を人間として見ない、自分さえ良ければそれでいい。そんな人間達の集まりだ。
聞こえる話が金だの政権だの跡継ぎだの耳が腐る様な話題が飛び交っている。
一刻も早くこの場を去りたい、オークションまであと十分程で始まる。
変に絡まれず辺りを見通せる場所を探そう。
隅にバーがある、あそこだな。
カウンターに寄りかかり会場を見渡す。吐き気がする光景だ。毎晩こんな事をやっているのか、こいつらは。
「はぁ…」
ふとため息をついてしまった。
「随分と疲れているようですね」
ふと隣から声が聞こえてきた。
「中佐とお見受けしました。宜しければ一杯」
四十代男性、少し言葉に訛りがある、帝都でも珍しいスーツを着こなしている、外国人だ。そして階級バッチを見て分かる人物。
これらを考慮して軍と深い関係があるもの、軍事アドバイザー。
自分が軍に居た時には居なかったがが噂には聞いていた、戦術や訓練など戦闘指揮を教える専門家だと。
だが自分は初めて会うこの男の事を知っている。
「どうです?一杯奢りますよ」
関わりたくない、互いの為だ。だが無視するのも返って良くない。適当に話し合わせるか。
「もしかして俺に聞いてるんですか?いやーすいません、ここの所あまり寝ていないのでついぼーとしてしまって」
「それはご苦労さまです。所属はどちらで?」
「北部の方に、まあ殆ど事務処理ですが」
バーテンがグラスを二つ並べた。
「どうぞ」
男は一つを手渡した。
「北部というとまだ内戦が続いているようで、さぞお疲れでしょう」
「俺には関係ない事ですがね、何で同じ人間同士が喧嘩し合うのだか」
「内戦に反対で?」
「手っ取り早くどちらかが謝ればいい話じゃないか。無駄に血を流すなんて馬鹿げている」
グラスに入った酒をいっきに流し込んだ。
「変わった方ですね、貴方ほどの階級の方がそんな事を言うなんて」
「軍は自衛の為、人の命を助ける為に力を使うべきだと思うんだがね。ここの奴らは自分の国で争いが起きているのを知っていて毎日こんな事をしているんだろ、吐き気がする。あんたも戦争屋なんだろ、ここの奴らと同じだろ」
「私は…」
男は言葉に詰まった。
「確かに戦争があるから私は生活ができます、ですが争いが好きな訳ではありません。いつかきっとこの争いが終われば平和が来ると…」
男は哀愁の目でグラスを覗き込んで語った。
そろそろ動こう、長居時過ぎた。
「もう時間だ、ご馳走さん」
カウンターから離れた。
「あの…いえ、今日はお会いできてよかったです」
男は思い悩んだ様に答えた。
「最後に一つ」
言うべきか、言うべきだろう。
「
復讐
は程々にな」さようなら、
彷徨う亡霊
。