第2話

文字数 764文字

PM 3:00 国立美術館前

美術館周辺には軍警察による厳戒態勢が敷かれていた。警備の中、両脇に隊員を引き連れた初老の男が美術館に入った。

常設展示室を抜け、さらに奥に進みと円形状の室内に放射状に広がる通路が四つ、天井は塔の様に高く天窓が付いた部屋の中央にはガラスのケースに入った絵が飾られている、既に15名が警備にあたっている。

「予定通り配置に着け」
男が連れてきた隊員に命令し、絵を囲む様に配置に着いた、部屋の中は男を含め21名になった。男が来た通路から小太りの男が小走りで近づいてきた。

「お待ちしておりました大尉殿」
近づいてきた男は肩で息をしていた。

「館長、到着が遅くなり申し訳ございません。道が混雑しておりまして」
大尉は息を切らせている館長を落ち着かせながら話しを進めた。
「警備は美術館内と屋外合わせて100人を動員しました」

「それなら良かった、これなら安心です。きっと怪盗も諦めるでしょう」
館長は少し落ち着きを取り戻した。
「警備は言われた通り、特注の防弾ガラスでできたケースで取り外すにも複数の手順が必要で、展示室に繋がる四つの通路も特製の扉で封鎖します。虫一匹たりとも入れません」

「しなしながら…」
大尉は話し始めた。
「奴は狙った獲物は逃さない。黒雨はそういう奴です。だが何故今頃になって盗みを始めたのか、奴が最後に活動していたのは二十年前、そして何故この絵をターゲットにしたのか」
大尉は絵を見て自分の思考を整理していた。



PM4:36
探偵と助手はとあるビルの屋上に到着した。
「ここでいいだろ」
探偵は助手に荷物を運ぶように指示を出した。
「さあ急げ、準備を始めるぞ」
探偵は屋上から見える景色を見ながら準備に取り掛かった。



                  
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

探偵 ユベール・ロッシュ・Jr.

ろくに仕事もせず酒に博打(主に競馬)、闇市巡りで暇をもて余す元軍人の主人公

普段はダメ人間だが驚異的な推理力と洞察力を持っており、その力は未来予知、千里眼に抜擢する

だが本人は無気力な為、普段は発揮せず、極所的な場面や気まぐれで発動される

よく競馬場で膝を突き崩れ落ちる姿を確認される

助手 チャシャ・ブラウス

探偵事務所で探偵がやらないこと(全部)をこなす健気な少女

孤児院で育ち、都会の生活に憧れて卒業後、就職先が見つからずさ迷っていた所を探偵に拾われ事務所の一部屋に住まわせてもらっている

天性の才能なのか初対面の相手でも友達になることができる

食い意地で腹が減ると人格が変わる

マレー

軍人 探偵とは士官学校からの同期で腐れ縁

太鼓持ちで世渡り上手で事件事故の対処など上官や部下からの評判がよく、順調に昇進している

その実態は探偵に頼み込み事件や事故を解決している

最近の悩みは彼女ができない事

「顔は悪くないと思うんだか、地位も金もそれなりに…」

助手曰く「なんと言うか…残念な雰囲気がするからじゃないですか?」

黒雨(こくう) 怪盗

二十年前に国内を騒がせた怪盗

魔術を駆使してこれまでに盗み取れなかったものはないが、盗まれたものは出所不明の作品ばかりで評論家の間でも謎を呼んでいる。

最近になりまた活動し始めたが当時の黒雨なのか、又は模倣犯なのか軍警察で調査中である

商人 ???

探偵の義理の甥 

常に黒いスーツを着こなし、右手首に手錠で繋がれた金属製の鞄を持っている

ただならぬ威圧感を放し、死線を潜り抜けてきた探偵でさえ油断すれば恐怖に飲み込まれるほど

目的の為ならどんな手段も問わない

国の要注意人物に指定されている

彼の過去については探偵ですら知らない

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み